(13)

「何とも無様な格好だな」

 緊縛された僕を見て、ヒルダがあざけり笑う。

「さっきまでの威勢はどうした?」


 ……にしてもこの魔女、本当に性格が悪い。

 もう勝ったも同然なんだから、わざわざ追い打ちをかけなくてもいいだろう。


 僕はムカムカして思わずヒルダをにらんだ。

 が、相変わらずフードが邪魔でその顔をうかがうことはできなかった。

 でもきっと、性格と同じくその素顔はとんでもないブスに違いない。


「なんだその目は?」

 僕の態度が気に入らないのか、ヒルダが声を荒げた。

「どうした、なにか言ってみろ?」


「………………」


 僕はヒルダを無視しそっぽを向いた。

 挑発には乗らず、この窮地きゅうちを脱する方法を考えることにしたのだ。


「だんまりを決め込むか。ではこちらから一つ訊かせてもらおう。さっきシャノンが言っていたことだが――オマエは今まで人を殺したことがないし、殺すことはできない、というのは本当なのか? にわかには信じ難いが」


 ヒルダはその点がどうしてもに落ちないようだった。


「だからそうなの!」

 後ろからシャノンが口をはさむ。

「さっきも今も、その子はあなたを殺す気なんてなかったのよ。ヒルダ、もういいじゃない。その子は助けてあげて」


「シャノン、キサマは黙っていろ!」

 ヒルダが振り返って怒鳴った。

「主人を助けようともせず一人で逃げおって!」


「別に逃げたわけではないわ。何度でも言うけど、私は年下とは絶対に戦わない。それだけのことよ」


「ゴタゴタぬかすな! ワタシの怒りはもう限界を越えた。キサマには今からそれなりの罰を受けてもらう!」


「あら、やっぱりやる気なの?」

 と、シャノンが刀の柄に手をかける。


「ククク、それよりも……」

 ヒルダが嫌な笑い声を立てて言った。

「もっと面白いことを思いついた。キサマとそのガキともども懲らしめる一石二鳥の策をな!」


 どうやらヒルダは、またロクでもないことを考えているらしい。

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