(7)
僕は一人で前へ進み、ヴィクトル将軍のアンデッドと
もちろんいきなり攻撃を受けないだけの間は取ってある。
剣の勝負ではまったく敵わないのは分かり切っているからだ。
ヴィクトル将軍はすぐに僕の存在に気付いた。
濁った眼でこちらをにらみ――
恐ろしい雄叫びを上げながら剣を振り上げ躍りかかってきた。
が、いくら強い相手とはいえ、知能が低下しているせいかアンデッドの攻撃はワンパターンだ。
僕は落ち着いて魔法を唱えた。
『リカバー!』
手の平から光があふれ、ヴィクトル将軍の体をやんわり包む。
将軍は「ウオッ」と唸り、剣と盾を地面に落とした。
そのまま二、三歩前によろめく。
しかし――
「え……!?」
あ然とした。
ヴィクトル将軍が魔法によって浄化される様子がまったくなかったからだ。
それどころかすぐに体勢を立て直し、両手を上げ僕につかみかかってきた。
しまった!
完全に見誤った。
アンデッドにも体力値はある。
そして、ヴィクトル将軍は『リカバー』で与えたダメージを上回る耐久力を持ち合わせていたのだ。
もう魔法を唱える余裕はなかった。
ヴィクトル将軍は両手で僕の首をつかみギュッと締め上げた。そのまま体を宙に持ち上げられてしまう。
足で将軍の体をバシバシ蹴ったが、ネコキック以下の攻撃力しか出ない。
――く、苦しい。
首の皮膚がドライアイスに触れたように冷たく熱い。
ほとんど呼吸ができない。
それでもまだ生きていられるのは、ヴィクトル将軍が『リカバー』のダメージで弱っていたからだ。
もし元の力でやられたら、おそらく瞬時に首をへし折られていた。
何とかもう一度魔法を――
そう思って精神を集中させるが、すでに脳に酸素がいっていない。
この状態で魔法を唱えるなんて無理だ。
「ユウトがやられた!!」
「誰か助けろ――」
遠くの方で竜騎士たちの声が聞こえる。
やばい。
意識が薄れてきた。
頭がぼんやりし、視界がどんどん狭くなっていく……。
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