(6)

 二十体ほどアンデッドを浄化し終えた時だった。

 前方から、今までとは違う、竜騎士たちの悲痛な叫びが聞こえてきた。


「――将軍!?」

「おい、ヴィクトル将軍だ!」

「お止めください、将軍!」


 どうしたのだろうと思い前へ進むと、道の真ん中に一体の大柄なアンデッドが立ちふさがっているのが見えた。

 顔色は死者そのものだが、立派な口髭に堂々たる体躯で、銀色に光る長剣とロードラントの紋章の入った盾を手に持っている。


 そのアンデッドは、他の個体に比べ明らかに強そうな雰囲気を漂わせていた。

 RPG的に言えば手ごわい中ボス、といった感じだろうか。


 ――あれがヴィクトル将軍なのか?


 ロードラント第二軍の総大将にして、僕が治癒魔法を使って助けた女騎士ティルファの父親。

 これまで何度か聞いた名前だ。


 竜騎士たちも敵が元将軍では余計に戦いにくいだろう。

 そう思って、僕は彼らに遠慮がちに声をかけた。


「竜騎士様、よろしければどうぞお下がりください。私が魔法でヴィクトル将軍を浄化いたします」


「……むむ」

 竜騎士たちは一瞬顔を見合わせ、僕に言った。

「確かにその方がよいかもしれぬ。分かった、ここはまかせよう。他のアンデッドは我々が排除する」 


 僕の申し出に、プライドの高い竜騎士も今回ばかりは素直に応じてくれたのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る