(4)

 そこへマティアスの怒鳴り声が飛んできた。


「ユウト、落ち着け! 足が動かないのなら魔法で治せ!」


 そうだった。

 言われるまで気付かないなんてバカだ、バカすぎる。

 ケガをしたって、自分で回復すればいいだけのことじゃないか!


 僕はさっそく手を患部にかざし『リカバー』を唱えた。

 まばゆい光が足首を包み、すぐに痛みが引いていく。

 どうやら骨折まではしていなかったらしく、一分も経たないうちにケガはあっけなく治ってしまった。


 これでローブの魔女と戦える。

 でも、まさかマティアスが僕のことを気にかけて、助言してくれるとは思わなかった。

 あとでお礼を言わなきゃ、と思いつつ、リナを取り戻すため走り出そうとしたその時――


「ウウッ」

 という、マティアスの苦悶くもんのうめきが聞こえた。


 シャノンを圧倒していたのにどうして――!?


 驚いて声のした方に顔を向けると、そこには、真っ赤な血だまりの中で膝をつくマティアスの姿があった。

 よく見ると、鎧の胴の中心部分がぱっくりと縦に割れ、そこから絶え間なく血が流れ出ている。

 

「他人の心配なんかしてるからこうなるのよ!」

 シャノンが冷たく言い放つ。


 どうやらマティアスは、僕のピンチに一瞬気を取られ、その隙にシャノンに一太刀浴びせられてしまったらしい。


「覚悟!」


 この機を逃すまいと、シャノンはマティアスに刀の乱れ打ちを浴びせる。

 マティアスも必死に防戦しているが、そんなに長くはもたないだろう。


 すぐにでも治療しないと、命が危ない。



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