(3)

 この魔女、やっぱりイーザの一員なのか?

 王女をみんなの前ではずかしめ、ロードラント王国に復讐しようというのか?


 いや、違う。

 見たところ本気でリナ――じゃなかったアリスが目当てとしか思えない。


 でも女同士なのに?

 いや、それについては別に驚くことではないかもしれないが……。


「ああ、なんという若さ美しさ!」


 魔女はこれ見よがしにリナの身体を撫でまわす。

 見ているこっちが恥ずかしくなるような、怪しい手つきだ。


「や、止めなさい!」

 リナは顔を赤らめ叫んだ。

「あなたは私を誰か知った上で、こんな狼藉ろうぜきを働いているのですか!」


「もちろん」

 魔女はククク、と笑って言った。

「アリス=マリー=ヴァランティーヌ=ド=クルーエル=ロードラント。ロードラント王国の第一王女にして、ルドルフ王の最愛の娘――」


 顔と顔がくっつきそうなくらい間近でみているというのに、魔女は自分が捕らえたアリス王女が、実は偽物リナだということにまったく気付いていない。


「ならばロードラント王国第一王女の名において命じます。すぐに魔法をとき私を解放しなさい! そしてアンデッドたちを土に返すのです! そうすれば寛大な処置を考えなくもありません」


「なんて気丈な王女様――でも残念ながらその願いは聞き入れられないねぇ。こんなにも美しく高貴な血をやすやす手放すなんてありえない」


 魔女は話しながら巧みに手を動かし、リナの装備していた鋼の胸当てを簡単に取り外してしまった。

 さらにその下に着ていた白いブラウスのボタンを二、三個外し、胸の中に手を滑り込ませた。


「キャァァーー!!」


「フフフ。カワイイカワイイ」

 魔女は嫌がるリナの気持ちなどお構いなしに胸を触り始めた。

「ああ――なんて柔らかで滑らかな手触り! 完璧だ」


「や、止やめろ!!!」


 僕は絶叫した。 

 このままではあのヘンタイ魔女にリナがどうにかされてしまう!


 が、魔女はリナに夢中で、僕の叫びなどまったく聞こえていないようだった。


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