(6)
もうなりふり構っていられない。
僕は戦い続ける兵士たちから少し離れ、腰の皮袋に手を突っ込んだ。
今ならスマホを使ったところで誰にもバレやしない。
喧騒に乗じてセリカと直接電話で話をしてやる。
そう思ったのだ。
そそくさスマホを取り出し画面を見る。
いくつかアイコンが並んでいる中にセリカの顔のドット絵があった。
――これか?
試しにそのアイコンをタップしてみる。
すると電話はすぐにつながり、画面にセリカの顔が映し出された。
このアプリ、現実世界と異世界の間を通信できるテレビ電話になっているらしい。
「???」
しかし、おかしい。
セリカの様子がヘンなのだ。
セリカは元々アリスにも負けないくらい整った顔をしているが、その表情はいつでも冷たかった。
が、今のセリカは現実世界で話した時とは別人みたいに、頬を
どうやらかなり興奮しているらしい。
セリカは開口一番、うっとりした声で言った。
「ユウト君、あなた素晴らしかった。最高よ……」
「有川君」ではなく「ユウト君」だって?
このやたら親しげな感じ――
気難しそうなセリカに、いったいどんな心境の変化があったのか?
「あのさ
が、セリカは僕の話を聞いていない。
独り言のように、一方的に話し続ける。
「私、ユウト君を見ていて、ちょっと――ううん、すっごく感じちゃった」
「はぁ?」
何を言い出すんだこの人。
と、呆れていると――
「なんかこう見ているだけ体が熱くなるっていうか、
現実世界から、異世界の僕をいったいどうやって抱きしめるんだか……。
褒められ過ぎて、逆にバカにされているような気さえしてくる。
「……清家さんもういいから。ふざけないでよ」
と、僕は真顔で言い返した。
「ううん、ふざけてなんてなんかない。私は心の底からそう思ってる」
「わかった、わかったから。それより清家さん、今もこっちの世界のこと見ているんだよね? だったらこのピンチを切り抜ける方法を教えてよ。頼むから!」
「え、ユウト君――それ本気で言ってるの?」
セリカの声が急に元に戻った。
つまり、ものすごく冷めたい感じに。
「何度言ったらわかるの? 私はそっちの世界の出来事に手出しできないの」
「だからそれは知ってるって。そうじゃなくてアドバイバスがほしいんだ。具体的にどの魔法を使えばいいのかとか」
「うーん」
セリカは首をひねった。
「それは、やっぱりあなた自身で考えて欲しいな」
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