(27)

「でもでも、もしわたしがあなたに勝つどころか本当に殺しちゃったら?」

 すっかり開き直ったセフィーゼが、アリスに問いかける。

「ロードラントはイーザを絶対に許さないんじゃない?」


「いや、王位継承者に二言はない。レーモンに厳命し、たとえ私が死んだとして約束は必ず実行させる。向こうで戦いを見守っている私の兵士たち全員がその証人だ。彼らが無事にロードラントに帰ったあかつきに、この取り決めが真実だということを証言させる」


 なるほど、それなら万が一アリスが決闘デュエルに負け命を失っても、セフィーゼたちが撤退するロードラント軍に手を出すことはないはずだ。

 アリスはそこまで考えて発言しているのだ。


 もちろん僕は、決闘デュエルでアリスをみすみす殺させるつもりはないが――


「あとは私が勝った場合だが――セフィーゼ、その時は武装を解除しおとなしく撤退しろ。その後は我々に武器と軍馬すべてを引き渡し、二度と反乱を起こさないように誓え。――それだけだ」


「いいわ、私もイーザの長として約束する」

 セフィーゼがうなずく。


「それと戦いにハンデなどいらんぞ。最初から魔法を使って全力でこい」


「えー」

 セフィーゼは口をあんぐりさせた。

「本当にいいの?」


「うむ。ただしこちらも一人、魔法を使える味方を呼ぶ。だがもちろん二対一ではない。セフィーゼはヘクターと組めばよい」


「二対二――計四人で戦うってこと?」


「そうだ。それで対等だろう」 


「ホントに、本当にそれでいの?」

 セフィーゼはあきれた顔で念を押す。

「言っとくけど、ヘクターはイーザの戦士の中でも一番強いんだよ? たぶん絶対後悔するよ。仲間の死体が一つ増えるだけだよ」 


「かまわん」


「へえー、ずいぶん余裕なんだね。ねえヘクター、その条件ならいいよね?」


「……仕方ありません。我々もあまり時間がない。早く終わらせましょう」

 ヘクターは渋々うなずいた。


 とはいえヘクターも、自身の剣とセフィーゼの魔法との組み合わせなら、絶対に負けないという確信があるのだろう。

 でなければこんな決闘デュエルを承諾するはずがない。


 そんな二人に対して、僕たちは――

 剣の腕に関してはまあまあのアリスと、白魔法しか使えない自分。

 勝てるのか? それで……。


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