(28)

「ユウト!」

 と、そこでアリスが僕を呼んだ。

 ついに出番が回ってきたのだ。


 そうだ、今は迷っている場合ではない。

 ここまで来たらやるしかない!


「いま行きます!」

 僕は兵士の群れを抜け、急いでアリスの元へ向かった。


「ユウト、すまない」


 緊張が緩んだのか、アリスの顔に一瞬ほっとした表情が浮かぶ。

 無理もない。

 この圧倒的に不利な状況で、セフィーゼとヘクターという難敵を相手に雄弁し、彼らを言い負かし、ついに二対二の勝負に持ち込んだのだ。

 アリスは戦わずして、すでに敵に一泡も二泡も吹かせたと言っていい。


「これぐらい譲歩しないとあの男ヘクター決闘デュエルなぞ認めないだろうからな」

 アリスが僕に小声で耳打ちした。


「わかってます」

 僕はアリスの瞳を見て答えた。


「私の魔法でアリス様を絶対に守ってみせます」


「……頼もしいな」


 アリスの頬がちょっぴり赤くなる。


 あっ!

 ついキザなセリフをはいちゃった!


 言ってしまった後で、急に恥ずかしくなる。

 ……でもまあ、セフィーゼからアリスを必ず守りぬくという決意だけは本物だ。


 しかし――

 僕を見て、セフィーゼが「キャハハ」といきなり笑い出した。


「え! 助っ人ってあんた? 冗談でしょう!? なあーにが『守って見せますよ』」


「……どういう意味だよ、それ?」 


 やっぱりこの、とってもムカつく……!

 僕は思わずセフィーゼをにらんだ。


「別にぃ。ただ王女のお付きの魔術師なんだからもっとこう大魔法使い、みたいなすっごい人を呼んだと思ったの。でも実際出てきたのはフツーの兵士――どころかひょろガキなんだもん。おかしいじゃん」


 あのなぁ、自分はどうなんだ自分は! 

 どう見ても僕より年下、しかもさっきまで泣きべそかいていたくせに!


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