(9)
竜騎士たちはハイオークの攻撃範囲を正確に見極めており、戦斧が振り回されても容易に避けられるだけの間合いは保っていた。
だが、ハイオークがいきなり
竜騎士団のうち、四騎ほどがハイオークの攻撃範囲に入ってしまった。
「シネ!!」
ハイオークはすかさず戦斧を水平に振り切った。
危ない!
こいつ竜騎士四人をいっぺんに始末する気だ。
しかし竜騎士もさるもの。
斧を叩き切られそうになった直前、その卓越した身体能力を発揮し、四人全員が馬を捨て地面に転がって伏せた。
いななく
たちまち乾いた大地に血の池が出現し、辺りは凄惨な地獄絵図へと塗り替わる。
一方、狙いを外したハイオークは「オウッ」と悔しそうに吠えると、今度こそと言わんばかりに戦斧を大きく振り上げた。
そこにほんのわずかな隙が出来た。
マティアスはそれを見逃さなかった。
「今だ!」
と、鋭く叫ぶ。
それと同時に竜騎士がハイオーク目がけ、一斉に
全員
その数、十数本。
ほとんどのスピアはハイオークの手足胴体に突き刺さったように見えた。
普通の人間なら串刺しになって確実に死んでいるはずだ。
ところが――
ハイオークが斧を構えたままで体を少しひねると、スピアはすべて地面に落ちてしまった。
どうやらスピアは、ハイオークの鎧は突き破ったものの、その下の固い皮膚に跳ね返されたらしい。
結局、手足など、鎧に守られていない部分にわずかなかすり傷を負わせたのみで、ほぼノーダメージのようだ。
そしてハイオークは不気味に笑い、戦斧を振り下ろした。
かろうじて体勢を立て直した竜騎士の一人が、剣でそれを受ける。
だが、あまりにも腕力に差がありすぎた。
勝負は一瞬でついた。
ハイオークの戦斧は、剣もろとも竜騎士を叩き切ったのだ。
リナが短い悲鳴を上げ、顔を背けた。
僕は逆に、恐ろしさのあまり体が硬直し目を逸らすことさえできなかった。
竜騎士は確かめるまでもなく即死で、治癒魔法を唱えてもまったく無意味なのは明らかだ。
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