(4)

「あの……」


 二人を見送りながら、リナが口を開いた。

 なぜか、さっきよりも顔色が悪い。


「どうした、リナ。お前までどこか具合が悪いのか?」

 と、アリスが訊く。


「あの、リューゴさまは? リューゴ様はどうなさっているのでしょう。まさか……」


「なんだ。リューゴのことか」

 と、アリスがほほ笑む。


「案ずるな。リューゴは絶対に死なない。どんなことがあっても仲間を助け生きて帰ってくる。あいつはそういう男だ」


「そ、そうですよね!」 

 安心したのか、リナの顔に笑顔が戻る。

「リューゴ様のことを心配するなんて、私がどうかしていました」


 しかし――

 

 “リューゴ”だと?


 その名を聞いて、僕は内心穏やかではなかった。

 現実世界で因縁のあった、ある人物の顔を思い浮かべたからだ。

 

 ――いや、ありえない!

 ここは現実世界とは違う。あくまで異世界なんだ!


 嫌な予感はしたが、僕は自分にそう言い聞かせ、無理やりその名前を頭から消し去ることにした。


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