(15)

 するとすぐに、スマホの画面に新たな数値が表示された。


 ネーム:ユウト=アリカワ

 クラス:ソルジャー

 H P:1350/1350

 M P:9780/9800

  力 :80

 知 力:6555

 速 さ:430

 守 備:352

  運 :100

 黒魔法:0

 白魔法:21025


 スキル:白魔法マスター

 状 態:正常

 弱 点:対人関係


 自分の能力を数値化して見るのは、なんだか変な感じがする。

 それに弱点が対人関係って――当たっているだけに、割とショックだ。


 ……でもまあ、確かに白魔法の能力とスキルは飛び抜けて高い。

 ゲーム上のマイキャラアバターそのまんまの数値なんだから、当然と言えば当然なんだけれど。


 とにかく、シスターマリアが倒れた理由は『スキャン』ではっきりわかった。魔法を使いすぎたことによる激しい疲労だ。

 ならばティルファの状態も同じように調べられるはず。

 

 僕はぐったりしたままのティルファを見つめ、神経を集中させた。

 再び『スキャン』を唱える。

 また一瞬で、画面の数値の表示が変わった。


 ネーム:ティルファ=ド=ロレーヌ

 クラス:ナイト

 H P:50/1350

 M P:0/0

  力 :211

 知 力:300

 速 さ:420

 守 備:356

  運 :78

 白魔法:0

 黒魔法:0


 スキル:見切り+

 状 態:気絶 ひん死 猛毒

 弱 点:なし


 かなり危険な状態だが、僕が注目したのは彼女が猛毒に侵されていることだ。

 これではマリアがいくら『リカバー』をかけ続けてもよくなるはずがない。

 つまり、HPの回復よりも、まず毒を取り除かなければならないのだ。 

 

 そうこうしている間に、ティルファのHPが50、49、48と、どんどん減っていく。

 まるで死のカウントダウンだ。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 とにかくこれで原因ははっきりした。

 そして今、彼女を救えるのは自分しかいない!


「ありがとう、清家せいけさん。何とかやってみる!」


 僕はいてもたってもいられず、スマホを革袋にしまうと、ティルファの方に向かって駆けだした。   


「すいません、どいて下さい……」


 兵士たちをかきわけ、僕はようやく列の先頭に出た。

 さらにティルファに近づこうと、前に進む。


 ところが、そこでレーモン公爵に気付かれてしまった。

 レーモンは武人らしい威圧感を漂わせながら、怒鳴り声を上げた。


「なんだお前は!」


 目の前にレーモンが立ちはだかる。

 冷たい目線だ。

 明らかに一般兵の僕を見下している。


 が、そんなことにひるんではいられない。

 このままでは手遅れになってしまうからだ。


「通してください!」


「お前、何をしようというのだ。さっさと隊列に戻れ」


「待ってください。僕なら、僕ならその女の人――いえ騎士様をお救いできます」


「なに? バカげたことを言いよって」

 レーモンはいきなり腰の剣を抜き、僕に剣先を向けた。

「一介の兵卒にそんなことできるわけなかろう。それ以上一歩でも前に出れば、アリス様に害をなす者と見なし切って捨てるぞ」


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