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 しかし魔法を唱えるって……。

 いざやってみようとすると、なんだか気恥ずかしい。


「さあ、早く」

 と、セリカがせかす。

「深く考えないで。シスターマリアを見ながら、心に強く念じ呪文名を口に出せばいいの」


「……わかった。やってみる」

 僕はぐったりしたマリアをじっと見つめ、神経を集中させた。


『スキャン!』


 ほんの一瞬マリアの体が光った。

 それと連動するように、スマホの画面に文字がずらりと表示される。


 ネーム:マリア=シャレット

 クラス:シスター

 H P:75/100

 M P:8/550

  力 :20

 知 力:350

 速 さ:88

 守 備:40

  運 :223

 黒魔法:0

 白魔法:1025  

 スキル:回復+

 状 態:激しい疲労

 弱 点:昆虫


 できた!

 本当にできた!


 ステータスの表示は僕の遊んでいたオンラインRPGアナザーデスティニーとまったく同じだった。

 各能力の基準値は100で、経験を積んでレベルが上がるたびに数値も上昇していく。


「ね、やればできるじゃない」

 セリカはそらみなさい、と言わんばかりだ。


「あのさ……これ、スマホの機能じゃないの?」


「そんなわけないでしょ。すべてあなたの力。スマホの画面にただそれが写っているだけ」


「すごい!」


「さて、なぜシスターマリアをスキャンしたかといえば……ねえ、ゲームの中で有川君のキャラ、白魔法の能力値はいくつだった?」


「20000ちょい」


 昼夜問わない、廃人プレイで得た力。

 十万人を超えるというプレイヤーの中でも、上位一桁に入る数値だ。


「つまりあなたは白魔法の力、あのシスターのだいたい20倍の力ということ。ね、少しは自信付いた?」


 自分にそんな能力が本当に備わっているのだろうか?

 僕はどうしても信じられなかった。

 

「まだダメ? じゃ、試しに自分自身を『スキャン』してみなさい」


「わかった」


 僕は自分自身に向かって『スキャン』を唱えた。



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