(2)

「竜騎士どもはやっぱ訓練されてんな」

 エリックがつぶやいた。

「あいつら、ロードラント軍の中でも精鋭中の精鋭だからな」


「へえ、そうなんだ」


「ああ。泣く子も黙るロードラントの近衛このえ竜騎士ってね。連中はアリス様を守ることが絶対の使命。何があっても動揺しない。しかもとにかく強い。本当に強いんだ」


「ふうん。強そうなのは見ためだけじゃないんだね」


「そりゃそうだ。連中は主に貴族や武人の子弟から選抜され、小さい頃からとんでもなく過酷な訓練をこなしているらしいからな。うーん、そうだな……」


 エリックはさっと辺りを見回した。


「例えば今、ここにいる俺たち歩兵全員でいきなり連中に襲い掛かっても多分敵わないよ。全員返り討ちだな」


「ええ!? だって兵士は二千はいるよ。それがたかだか百程度の騎士に?」


「ああそうだ。嘘でも誇張でもないぜ」

 エリックはニヤリとした。

「どうやら少し風向きが変わってきたようだからな。もしかしたら連中の強さを実戦で拝めるかもしれん」


「え、それって……すぐに戦いが始まるってこと!?」


「うむ。だからユウト、おめーも油断するなよ。あいつらは王女の護衛には命だって懸けるが、俺らのことなんかまったく考えちゃいねえからな。末端の兵士が何人死のうがまったく関心ないんだ。

 いや、それどころかせいぜい俺らを『肉の盾』くらいにしか思ってねえ。死にたくなきゃ自分の身は自分で守らなきゃいけないぜ」


 肉の盾?


 今一つピンとこない。

 まあ、いつの時代だって弱い者は真っ先に死に力を持つ人は最後まで生き残るんだ。

 それは真実だろう。


 でも、こんなに平和な雰囲気なのに、本当に戦いなんてが起きるのだろうか?

 敵の気配なんてまったくないし。


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