(11)

「おい、貴様ら!!」


 そこで、しゃがれ気味の怒鳴り声が僕たちの会話を遮った。

 兵士たちを見まわっている老騎士レーモンだ。


「さっきからうるさいぞ!! いい加減にせんか」


「おおっと」

 エリックが肩をすくめた。

「こりゃ、おしゃべりが過ぎたようだ。ま、戦いが終わったらまたいろいろ教えてやるよ」


「どうもありがとう」


「いいってことよ」

 エリックはウインクして前を向いた。


 ――にしても、この人、本当に単なる兵士なのか?


 エリックの目に宿る鋭い光を見て僕はそう思った。

 少なくとも、何か色々事情を抱えてそうな人ではある。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆



 それからしばらくの間、アリスを守るロードラント軍は何事もなく前へ進んだ。

 エリックの言う通り戦闘は当面なさそうだし、道のりはきわめて平和だった。


 ただ一つ、不思議なことがあった。 

 それは、歩いても歩いても、あまり疲れを感じないという点だ。


 現実世界では、なかばひきこもりのような生活をしていたのに、いったいどういう訳だろう。

 こっちの世界にきて、体力もそれなりに上昇したということなのだろうか。


 では、肝心の魔力の方は――?

 セリカはさっき、オンラインRPGの世界の同等の能力を僕は持っていると言っていたけど……。

 ぜひ試してみたいが、そもそも魔法なんてどうやって使えばいいのかわからないし。


 と、そんなことを取り留めもなく考えていると――


「前方に騎兵が一騎! こちらに向かってきます」

 誰かが突然叫んだ。


 途端にロードラント軍全体に緊張が走る。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る