(6)
と、そこへまた、栗毛の馬に乗った別の少女が現れた。
その子は全身鎧姿のアリスとは違い、上半身に鋼の胸当てを付けただけの軽装備だ。
「あらアリス様、それはあんまりですわ」
少女はそう言って、アリスとレーモンの間に割って入る。
――ええ!! あ、あれは!!
その顔を見て、僕は仰天した。
理奈じゃないか――!!
さらりとした長い茶色の髪に大きくぱっちりとした目、うっすらと日焼けした肌。
いかにも元気一杯な感じで、可愛さでもアリスに決して負けていないのだが、どこからどう見ても、幼なじみの
どういうことだ!
なぜこの世界に理奈がいる?
僕の頭はますます混乱した。
異世界に来て、ようやく理奈への想いを断ち切れると思ったのに。
これではわざわざ転移した意味がないではないか!
「ああ、リナ。いいところに来てくれた」
アリスは困った顔をして懇願する。
「レーモンになんとか言ってくれ。あれをするなこれをするなと、
――リナ、だと?
名前まで同じ!!
僕は我慢できず、ヘッドセットに向かって呼びかけた。
「ちょっと、
「なに? そんな大きな声出して。まわりに気づかれるわよ」
セリカはすぐに返答してきた。
「あの、理奈が――幼なじみの七瀬理奈があそこにいるんだけど」
「へえ、そうなの」
セリカは別に驚くわけでもない。
「ねえ、これってどういうこと? ここは現実の日本とはまったくの別の世界なんじゃないの?」
「そうよ。でもそちらとこちらの世界は平行して存在するってことも説明したよね?」
「うん、確かに……」
「つまり、現実世界と同一の人物がそっちの世界にいても不思議ではないの。もっともあなたと違って、彼女は現実世界の記憶があるわけでも、両方の世界を行き来できるわけでもないけどね」
「???」
「ま、あまり深く考えないで。なんならそっちの世界の彼女とうまくやり直せばいいじゃない。じゃね」
と言って、セリカはまた一方的に通信を切った。
視線を戻すと、三人はまだ揉めていた。
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