(3)

「ここはどこ? やっぱりマジで――異世界?」

 隊列に合わせて歩きながら、ヘッドセットの向うのセリカに聞く。


「そう。あなたが望んだ剣と魔法の世界。オンラインRPGに似た夢の異世界よ」

 セリカは平然と答えた。


「でも……いきなりこんな所に放り出されてもぜんぜん状況がつかめないよ。この軍隊はいったい何なんだよ」


 同じファンタジーの世界でも、さすがに最初はもう少し落ち着いた場所へ来たかった。街とか、お城とか……。

 そう思って、僕はセリカに不満をぶつけた。


「あのさあ、これがゲームだったらまずチュートリアルをこなし、ギルドに登録し仲間を集めて、色々なクエストを受けこなしていく。それが普通の流れだと思うんだけど」


「残念でした。転移前に言った通り、そこはゲームの世界じゃなくてあくまで現実だから、そんなまどろっこしいことはやってられないの」


「いやいや、だからっていきなり武器を持って戦えってこと? 無茶苦茶すぎるよ」


「ま、そう慌てないで。そのうち色々わかってくるし、あなたはその世界で生き延びるだけの最低限の力は持ってるから」


「でもさ……」


 戸惑うな、という方が無理だ。


「ええっと――オンラインRPGでのあなたの自キャラアバター回復役ヒーラーだっけ?」


「そうだけど」


「しかもかなりレベルの高い」


「うん」


「ということは、あなたは今、そのキャラと同じ能力を備えているはず。そっちに行く前にそう言ったでしょう」


「確かにそれは聞いたけど」


「じゃあ何も心配する必要はないわ。最低限の力に加えて、今のあなたは回復役ヒーラーとしてすっごい能力を持っているんだから。ま、慣れるまでは私がナビゲートしてあげるから。ちょっと冷静になってまわりを観察してみて。それじゃ、いったん切るね」


 セリカはそう言って、一方的に通話を切った。  


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