(8)
それから三十分後――
どこをどう走ったのかわからないまま車は立派な門をくぐり抜け、広大な庭付きの一軒の豪邸の前に止まった。
「さあ着いたわ。降りて」
と、セリカが
言われるままに車から降りると、目の前に石造りの大きな建物があった。
三階建てで三角の屋根。まるで西洋の豪華なお城のような外観だ。
「すごい! ここ、本当に清家さんの家?」
僕は驚いて尋ねた。
「そうよ。でも、そんなにびっくりするほどのことでもないわ」
セリカは大理石の階段を上り、黒い重厚な両開きの玄関ドアの前に立った。
僕はおずおずとその後に続く。
すぐにドアが開き、背の高い黒服の男が現れた。
いわゆる執事と言うやつだろうか――中年の、髪を七三に分けた、いかにもきっちりとした感じの人だ。
執事なんて漫画かアニメの世界にしか存在しないと思ったけど、この家になら、むしろいなければおかしい。
「セリカ様、お帰りなさいませ」
と、執事が頭を下げる。
「ご苦労様、ねえ、彼――有川君をあの部屋に案内して。大事なお客様なの」
「かしこまりました」
執事は事情を聞くわけでもなく、僕の方に向き直り、
「どうぞこちらへ」と、室内に招き入れた。
今さら断ることもできない。
僕は仕方なく、お屋敷の中に足を踏み入れた。
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