(6)

 いや、“出会い”というより、むしろ“再会”と言うべきなのか――?

 まったく親しくはないが、セリカは高校のクラスメイト。

 ついさっきまで、一緒の教室で授業を受けていたからだ。


「やっぱり有川君だ。ねえ、こんなところで何しているの?」

 と、セリカは積極的に話しかけてくる。


清家せいけさん……」


 セリカは日本人とドイツ人とのハーフだ。

 入学初日のクラスの自己紹介の時、そう言ってた。


 確かに、銀色に光る長い髪とダークグリーンの不思議な色の瞳を見れば、彼女に外国人の血が入っていることは一目瞭然いちもくりょうぜん

 さらに闇夜でもわかる透き通るような白い肌――それは神秘的とさえ形容できる美しさだった。


 学校の中で理奈が可愛い系№1とすれば、セリカは間違いなく綺麗系№1だろう。

 しかも噂では、セリカの父親はどこかの大企業の重役で、家はとんでもない金持の超が付くお嬢様らしかった。


 何もかも持っているように見えるセリカ。

 しかし、唯一欠けているものがあった。


 感情だ。


 クラスメイトとして過ごした何週間の間に、僕はセリカの笑った顔を一度も見たことない。

 いつも無表情ですごく冷たい感じ。

 周囲にバリアを張り、誰も寄せ付けない雰囲気を常に漂わせている。


 だからたぶん、彼女は友達が一人もいない――僕と同じように。


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