(5)

 その後、何時間街をさまよっただろうか――

 いつの間にか陽は落ち、空のあちこちに星が輝き始めていた。

 

 気が付くと、僕は人気のない踏切の前に立っていた。

 急行電車が猛スピードで、目の前を何回か通過していく。

 それを虚ろな目で見つめながら、ふと思った。


 ――もう生きていく気力もないし、生きている価値もない。


 と。


 そして考えた。

 これは現実なのだろうか? 


 いや――違う。


 そう、これは夢だ。

 夢なんだ。


 しかもひどい悪夢

 じゃあ、目覚めるには、どうしたらいい?


 思いつくことは、一つ。


 このまま前に進んで電車に飛び込むのだ。

 そうすれば悪夢は消えてなくなるだろう。


 死ぬことなんて怖くない。

 むしろ安らぎなのだ。


 踏切の警報がまた鳴り始めた。

 急行電車が、また、すぐそこまで来ている。


 僕は何かに取り憑かれたかのように一歩一歩前に進み、遮断機の棒に手をかけ、少し持ち上げた。

 そこをくぐって、線路内に入ろうとする。


 その時――


「あなた、死ぬつもり?」


 誰かが僕の肩を後ろからぐいっとつかんだ。

 振り向くとそこには、見覚えのある一人の女の子が立っていた。


 そしてそれが、清家せいけセリカとの運命の出会いだった。


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