(4)
苦痛に満ちた一日がようやく終わった。
身も心も疲れヘトヘトになり、一刻も早く家に帰ろうと学校を出て駅まで続く一本の道を急いでいると――
前方に同じ高校の制服を着た男女二人が、並んで歩いているのが見えた。
「あれ……」
僕は一瞬、自分の目を疑った。
その女子生徒のうしろ姿が、間違いなく七瀬理奈本人だったからだ。
「うそ……だろ」
理奈と男子生徒は楽しそうに会話しながら、夕日に染まる帰り道を堂々と手を繋いで歩いていた。
それはどこからどう見ても、ほほえましい高校生カップルだ。
しかし、僕にとっては“衝撃”以外のなにものでもなかった。
「おい! 理奈から離れろ!」
と、思わず大声で叫びそうになる。
しかし――
理奈の相手が誰であるか気づき、僕はそのセリフをグッと飲み込んだ。
容姿も成績もトップクラス。しかも二年生にしてサッカー部の副主将を務める、スクールカーストの最上層にいる男子学生だ。
つまり、理奈のような完璧な女子にもっともふさわしい相手。
きっと学校の誰もが、二人はお似合いの組み合わせと言うだろう。
それに比べ自分はどうだ。
まったくいいところのない不登校ダメ高校生。
惨めだ。
惨めすぎる。
くそっ!
僕は思わず髪の毛を掻きむしった。
全身が震え涙がにじんだ。
あまりのことに吐き気すら覚えた。
が、それ以上何もできない。
ただその場に立ち尽くし、仲睦まじいリナと佐々木を見送るしかなかった。
二人の背中は次第に小さくなっていき、やがてどこかへ消えてしまった。
くそっ!
くそっ!
くそっ!
こんな思いをするなら、無理して学校に来るんじゃなかった。
僕は激しく後悔した。
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