(2)

 ――この高校の生徒は揃いもそろって優秀すぎる。


 その事実に気づいてしまったのは、入学してからすぐのことだ。

 誰もが勉強、スポーツ、遊び、そしてコミュ力――すべてにおいてレベルが高い。

『リア充』『陽キャ』という言葉がぴったり当てはまる。

 クラス全員がそんな感じなのだ。


 一方の僕は、なんの取り柄もない人間。

 得意なことなど皆無で、ほとんどの科目でビリッけつの落ちこぼれ。

 まさに白鳥の中のアヒルそのものだった。


 だから当然、入学後いつまでたってもクラスの中で友達ができなかった。

 クラブやサークルにも、もちろん入れない。

 それどころか、日常会話をする相手すらいない。


 分かる人には分かると思うけれど、それがどんなに肩身が狭くつらいことか……。

 学校にいる間中、針のむしろに座っているような気分だった。


 そして余計に卑屈になり、コンプレックスの塊になり、自分の殻の中に閉じこもる悪循環―― 


 高校に入ってわずかな時間で、僕はそんな人間になってしまったのだ。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 入学して一か月を過ぎたあたりで、僕は学校を休みがちになっていた。

 さらにその頃、学校の保険室である嫌な事件に偶然巻き込まれ、不登校に拍車はくしゃがかかった。


 学校に行っていないという後ろめたさから、外出することもほとんどなくった。

 代わりにやったこといえば、部屋に引きこもってのオンラインRPG廃人プレイ。

 お定まりの人生終了コースだ。


 ただ、有り余る時間のほとんどをゲームに費やしたため、自キャラアバターのレベルとランキングだけはぐんぐん上がった。

 皮肉にも、ゲームの世界での自分は、いつの間にか超一流になっていたのだ。


 でも決して楽しくはない。

 むしろしんどい。

 ゲームがただの現実逃避だということは、よく分かっていたからだ。


 そんな悲惨な状況の中での、唯一の希望――

 それが幼なじみの七瀬ななせ理奈りなの存在だった。


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