第一章 絶望の現実世界

(1)

 現実世界。

 6月下旬、梅雨の晴れ間のある月曜日。


 初夏を感じさせる強い陽差しの中、僕は一人トボトボと、校舎へ続く急な坂道を歩いていた。

 最後に学校に来たのはいったい何週間前だったっけ? 


 ――自分でも思い出せなくなるぐらい、久しぶりの出席だ。

  

 でも本当は行きたくない。

 クラスメイトにも会いたくない。

 というか、教室に足を踏み入れるのすらつらい。


 それでも無理に登校したのは、このまま休み続けると2年への進級が危うくなる、という消極的な理由からだった。

 さすがに留年はしたくないし、もしそんなことになれば高校中退へまっしぐらだ。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 不安と緊張で卒倒しそうになりながら、僕は教室に入って自分の席に座った。

 教科書を取り出し、おどおど周囲の様子をうかがう。


 久しぶりの教室。

 久しぶりのクラスメイト。

 一応、見慣れた日常の風景だ。


 けれど誰も僕に声をかけてこない。

 みんな三、四人のグループを作って楽しそうにしゃべっている。


 やっぱりここは自分の居場所はない。

 改めてそう思い知らされる。


 要するに完全に浮いた存在。 

 いわゆるぼっち。


 でも、それは長期欠席した為ではない。

 学校を休む前から、すでにそういう状態だったのだ。


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