第5話

 休みの日だと、ついつい部屋着のまま1日を過ごしてしまう。けれど、朝奥田くんに言われたのを気にして、私はとりあえずシャワーを浴びて、誰かに見られても大丈夫な部屋着でその日は過ごした。


 録画したドラマを観て、それが終わるとレンタルした映画を観て、その後ちょっとだけ仕事をして、

気がついたらまた眠っていた。


 そして、目が覚めたのは夜の8時。


 あー、もう休みも終わってしまうのかーとうなだれながら、洗濯物を取り込んでいないことに気がついて慌てて取り込む。


 その時、またもや私は奥田くんを見掛けてしまった。


 こうなると、今まで気が付かなかった私が本当に

 不思議になる。


 でも、今回は奥田くんの方は私に気づいていなかった。それに安心して、窓をそっと閉めようとすると奥田くんの他に女の子の声が聞こえた。


「ねぇ、泊まっていっちゃダメ?」


「別にいいけど。俺明日朝からバイトだから出るの早いけど」


「そんなの全然いいよー。文哉くんと一緒に私も

 一緒に出るから!」


 そう言って、2人は部屋に入ったようだった。


 ここはラブホテルか!と心の中でツッコミを入れて私は窓を閉じた。


 その後、私は急に落ち着かなくなった。


 この床の下で、今頃あの無口な奥田くんが女の子とイチャイチャしているのかと思うと…。


 若いっていいなぁという思いと、そんなの熱病なのにという冷めた思い。


 そして、……2人は恋人なのだろうかという疑問。そんな色んな思いが入り混じって、あれやこれやともくもくと想像が浮かんできた。


 あーんな何も興味ありませーんってテンション低い顔してても、やっぱり女の子はキャッキャッしたタイプが好きなんて普通じゃん。


 なーんだ。つまんないの。


 いつの間にか、もくもくはモヤモヤに変わっていて、私はお酒を手に今度はイライラしていた。


 そして、床に寝そべり、足をバタバタさせるという子供じみたことをしていたところに、電話が鳴った。


 それはまた元恋人からの電話だった。


 ため息をつきながらも「…もしもし」と電話にでた。


「お前さー、人の事バカにするのもいい加減にしろよ。人の気持ち弄んで楽しかったんだろ?そういう女だったんだよな?」


 相手はまた酔っていた。


「…ごめんなさい」


「ごめんで済めば警察いらねーんだよ!!」


「本当にごめんなさい」


「…凛子〜。俺まだ凛子が好きなんだよ。やり直そうよ。俺の事好きじゃなくてもいいから。お願いだから一緒にいてよ…」


「ごめん…」


「ふざけんな、バカ女!!」


 その怒鳴り声と共に電話は切れた。


 私は自分のどうしようもなさに泣いた。自業自得で泣く資格なんか無いのに。


 足をジタバタさせて泣いた。


「好きじゃないのに一緒にいるなんて、そんなの出来るわけないじゃーん!!」


 奥田くんに怒られる事が分かっているのにドタバタするのを止められなかった。


 むしろ、怒られたかった。

 

 私は迷惑な上の階の住人でいて、迷惑な大人でもあった。

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