本編①

1話 相模さんち

とりあえず、お母さんに「お前は家の子じゃない」宣言を聞いた朝から、数年。

あたしは高校2年生になった。

真実を聞かされるまであと2年を切る。

今日から、カレンダーにバツをつけてカウントダウンをすることを決意する。

あと……6ぴゃく……なん……日だろ。

正確な数字はよしとしよう。


そうなのだ。

あれから、酔っぱらって帰って来たお母さんを狙って何度かモーションをかけたと言うのに、一向に口を割らない。

それに関することは何も教えてくれない。

「お酒を吐いても、この話は吐かないわよ。あんたなんかに」

と、毒づかれて終わった。


この真実をお兄ちゃん達が知っているかわからず、あたしは誰にも言えずにいた。

だって、知らなかったとしたら。

もしこの真実を知ってしまったとしたら、ギクシャクしてしまうかもしれないし。

とは言うものの、あたしは自分で思うより、神経が図太いみたい。

たぶん神経の周りにふかふかの毛でも生えているのだろう。

やっぱり兄妹は、兄妹としか思えなかった。

お母さんだって、お母さんだし。

ギクシャクする時間なんか1秒もなかったのだ。


まあ、ずっと一緒に暮らしてたせいなんだと思うけど。

あまり、血の繋がりにこだわりはなかったみたいだ。

それ以前に、うちの家族は若干、変わっているらしい。

なにがどう変わってるかわからないけど、友達に言うと笑われることが多かった。

そんな環境で育ったせいかもしれない。

たぶん、あたしは細かいことを気にしないのだと思う。

よって、神経の周りには毛が生えたんだ。

もしかしたら、亀の子タワシみたいに、チクチクかもしれない。


あたしのお母さん。相模サガミハルヒ。

これはあくまでも芸名だ。

なんでも、いちばん上のお兄ちゃんが産まれる前は小説家だったらしい。

20年前に「ウミネコとあたい」という名前を聞くだけで面白くなさそうな小説でなんだか賞を受賞したらしい。

だけど、それからくすぶり続け、現在は何も書いていない。

あたしも見たことがない。

そんな事実を知ったのも最近だし。

その代わり、お母さんがテレビ出演をして、どうしようもないダメ親とかぐだぐだゆるゆる毒舌キャラで人気物になり、現在は女優業や声優、タレント業をこなしている。

そして仕事終りに飲みに行って夜は大体、家にいない。朝に帰ってくる。

自由人という名に相応しいお母さん。


でもさすがに、あたしたちが小さい頃は、適当代表みたいな性格のお母さんもまずいと思ったのかお母さんのお母さん。

一言で言えば、おばあちゃんが同居してくれていた。

なので、あたし達4人兄妹は、おばあちゃんに育てて貰ったという話だ。

あたしが小学校高学年になった時に、他界してしまったけど。

なので、お母さんと兄妹3人とあたしで東京都内の片隅のマンションで暮らしている。

今では、大人になりかけてるあたし達を完璧に野放しにしている。

それでも、家族仲良く生活しているのだ。

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