ブラコントリガー★~実の娘ではないと言われましたが、本当のお兄ちゃんは誰ですか?~
ラティア・アクティナ
エピローグ①
お母さんの子供じゃない
ある朝、酔っぱらってくだを巻いたお母さんは、あたしに言った。
「あっ、そうなんだ」
お母さんはよく酔っぱらって朝帰りしてくる。
その日だって、いつものことだと思ってたいたけど
「えっ?」
今、普通になんて言ったの?
お母さんの赤らんだ顔を凝視してしまった。
「だから。アサカはあたしの子じゃないのよ……あっ、言っちゃった」
口を両手で押さえるけど、もう遅いのだ。
耳の奥から脳にまでしっかり辿り着いてしまっている。
〝アサカは家の子じゃないのよ〟
って、なんたることだ!
「ほ……本当なの?」
「違う。嘘ついた。エイプリルフール」
7月。夏休みが始まって浮かれていた季節にカスリもしない冗談。
「……お母さんの嘘つき」
「……そんなこと言う子に育てた覚えはないわよ」
「あたしも育てて貰った記憶がないよ」
だって、今日の朝食だってあたしが作ったし。
お母さんが家事をしているとこなんか見たことがない。
正確にいえば、一緒に住んでいたおばあちゃんに育ててもらったようなものだ。
「……」
「……」
無言で見つめ合うと、やれやれといった顔で溜め息をつかれた。
まるであたしが聞きわけのない子みたいじゃないか。
「アサカはあたしが産んでないのよ。いや、墓まで持ってくつもりだったのよ、これ。この話。本当に!! お墓にインだったの!!」
諦めたお母さんは流しそうめんが流れるスピードより早口で言うと、口を尖らせ、そっぽを向いた。
すねた子供みたいに。
「……そうですか。じゃあ、あたしだけ、血の繋がりがないんだ。赤の他人なんだ……あたしだけ御上りさんだったんだ」
「御上りさんは違うと思うけど」
あたしの家族はお母さんの他に3人の兄妹がいる。
今まで和気あいあいとした毎日を送っていたというのに、それは全て嘘偽り極まりない日々だったということになる。
頭に隕石が落下して、宇宙人が三輪車で現れたようなショックだった。
「でも、お兄ちゃんはいるよ」
お母さんは呟いた。
「えっ?」
「あんたには血の繋がりのあるお兄ちゃんが、ちゃんといるから。安心しなさい」
「えっ? あたしだけじゃないの? どれ?
タカ兄? ヤマ兄? キョウ? どれ、どれ、どれ、誰?」
お兄ちゃん達の顔が浮かぶけど、どれが本物兄か区別なんかつくわけもなかった。
それなのに
「教えない」
「はっ?」
「おっしえなーい」
なぜか、舌をだしてプププと笑った。
「意地悪! 嘘つき! 呪いあれ!!」
「口悪い。嫌だ、アサカ」
「うんんん」
「だって、みんな、兄妹で家族でしょ?」
「うん」
「だったら、誰と血が繋がってなくてもいいじゃない。兄妹に変わらないじゃない」
「あー、そっか」
感心して頷いた。
って、お母さん!!
「なんか話が違くない? 血の繋がってるお兄ちゃんが誰か位教えてよ! つうか、なんであたしがお母さんと血が繋がってないの?
なんで一緒に住んでるの?」
思わずお母さんの肩を持って前後に揺らした。
「く、苦し……吐く」
その言葉から10分後。
トイレから戻ってきたお母さんがすっきりした顔であたしに言った。
「あんたが高校卒業したら教えるわ」
あたし、小学校6年生。
ラジオ体操に向かう前の出来事だった。
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