第16話 お手伝い魔法改め、台所魔法?
お手伝いを任されたのは俺でした。
そういえば、魔法を見せたあとお手伝いよろしくと頼まれてたな。
お手伝い……頼られて悪い気はしない! むしろどんと来いだ。
こう、家族っぽいイベントは地球にいた頃は中々無かったから楽しみだ。
「何を手伝えばいいですか?」
ベットから立ち上がり、ネコナ母さんへ問いかける。……ティアナを置いていくのもなんだし。
振り返って。
「ティアナも一緒にお手伝いしないか?」
「え、私も?」
あれ、普段はお手伝いしてないのか。
女の子ってお母さんのお手伝いをしてるもんだと思っていたが、俺の幻想に過ぎなかったか。
「そうねぇ〜。
「ふ、復帰? 今回だけじゃあ〜」
幻想は実在し……どっちだ? まぁいいか。
ネコナ母さんと二人きりは変に緊張しそうだから助かるのは秘密にしとこう。
「ふ〜ん、そんなこと言うのね……」
ネコナ母さんは俺、ティアナの順に視線を向けるとそう呟いた。
あ、これバレてる……まぁネコナ母さんだしな。
まぁティアナにバレてなきゃいいや。
「ひ、久々だったからちょっとめんどくさいと思っただけで、べ、べべ別に嫌なわけじゃないってば」
うん、バレてない。これはバレてない。
前に伸ばしたティアナの手を掴み立たせる。
「ふふ、じゃあいきましょうか」
そう言って部屋を出るネコナ母さんに二人で付いて行く。
キッチンに着いたので、とりあえず手を洗う。
せっかくなので覚えたての魔法を使い洗った。
水気を飛ばす風の魔法で手を乾かそうと思ったがこのままやると水が飛び散る。
流しの方へ、下に向く風を意識して発動。
「あ、風が下向きに出てる!」
後ろにいたティアナが肩越しに見ていたようだ。
肩に置かれた手から、ソワソワしている気配が伝わってくる……使ってみたいのね。
水と風両方の魔法を消さずに場所を代わる。
はしゃぎながら手を洗い乾かしているティアナを見ているとネコナ母さんが生暖かい視線を向けているのを感じ、少し気恥ずかしい感じがした。
「ティアナ、そろそろ止めていいか?」
「いいよ」
「あら、せっかくだし私も使っていいかしら」
「「どうぞどうぞ」」
二人して流しから離れると、入れ替わりでネコナ母さんが流しで手を洗う。
「ソラ君、水の方はそのままにしておいてくれるかしら」
「分かりました」
手を乾かして終えたみたいなので、魔法を止めようとしたらそう頼まれたので風だけ止める。
水はまだ使うみたいだが、まさか料理に使う気なのか……水で味が変わるのかな。
「私はお米研ぐから、貴方たち二人はそこにある野菜を適当なサイズに切っておいてちょうだい」
「は〜い」「了解です」
そうか、米なら確かに味に変化があるかもしれない。ただ、死んだ爺ちゃんは米は育った所の水で炊くのが一番だって言ってたけど……どうなんだろ。
この後食べれば分かることだし、気にしてても仕方がないので野菜を切ろう。
置いてあるのはジャガイモにニンジン、ダイコンとアスパラガスだな。ご丁寧に皮は剥いてある。
皮剥きは下手にやると食べれる量が減りかねないから助かる。自炊に慣れるまでどれだけ無駄にしたことか……。
切り方はティアナと同じようにでいいかな。
ジャガイモとニンジンは乱切りに、ダイコンは短冊切り、アスパラは適度な大きさに斜めにカットしていく。何作るんだろ。
「ソラ君、ちょっと来て」
呼ばれたので、アスパラのカットを中断して向かう。
「このナベを火にかけといてくれる?」
バラバラの煮干しと干しキノコが水に沈んでいるナベを受け取り、コンロに置いて火を……火を……どうやってつけるんだ? コンロのナベを置くとこの五徳はあったけど火を点けるツマミが無い。
五徳の中央に紅い透明な石があるけど、触ったりしても何も起きない。これナベ置くと触れないな。
使い方がわからない。自炊してた頃使ってたコンロならこう、ツマミをカチッと回すだけで火が点いたのに……カチッ? なんか音がしたな。
地球にいた頃を思い出して、コンロのツマミをひねる真似をしてたら火が点いていた。
こっちでもコンロの火は青いんだな。
「あ、ソラ君弱火でお願いね」
弱火か……偶然火は着いたけども火力調整はどうやるんだよ。
よし、とりあえず自炊してた頃使ってたコンロのイメージで、イメージ上のツマミを火を点けた時と逆方向にゆっくり絞るみたいに軽くひねる真似をする。するとコンロの火は弱火になった。
しかし、異世界のコンロは凄いな……モーションセンサでも付いてんのかな。んなわけないか。
「よく使い方知ってたわね。あ、この土鍋もコンロに置いてくれる? 土鍋の方の火は私がやるからつけなくてもいいわよ」
土鍋を受け取り、火にかけたナベの隣のコンロに置く。土鍋で炊飯するみたいだな。
ネコナ母さんが来たので場所をどくと、ネコナ母さんはコンロの側面についた透明な石に触る。
するとその透明な石から小さな丸い魔法陣が展開され、それに触れて火を操作している様だ。
ああやって使うのか……あれ、俺どうして火が点けられたんだ。それに火の色が違う。
「ね、ねぇソラ君? ナベの方どうやって火を点けたのかしら? なんだか火も青いし……」
「えっと……こうやって、カチッと」
火を点けた時を思い出しながらツマミをひねる真似をする。
「あ、あら?」「え……」「あ、火が浮いてる」
そう、青い火が浮いていた。
ひねった真似をした俺の手の前で。
点火時と同じ方向へ手をひねる。
火は大きくなった、強火だな。
逆方向へひねる。
手の動きに合わせて火は小さくなる。
弱火……いや、とろ火ってやつか。
限界まで手をひねるが、火は消えない。
もしかしなくても、コレ……俺の魔法だよな。
消えるように意識したら消えたし。
「新しい魔法覚えたみたいです」
「そ、そうみたいね……とりあえずナベの火、もう少し弱めてくれる? 私が思ってるより火力が強いみたいだから」
「小っちゃい火が輪っかみたいに並んでる方がコンロに似合うね、お母さん」
「そうね」
ナベの火を弱火からとろ火に、限界まで弱めて火を見比べる。
ネコナ母さんが点けた火は紅い透明な石の上に一つオレンジ色の火が灯るだけ。焚き火とかでよく見る炎だ。
一方、俺が点けた火はまんまガスコンロの火。
ガスコンロをイメージしてたからだよな、コレ。
俺の火は紅い透明な石の上ではなく、石を囲うように燃えている。
しかしなんだ……ちょっと気分が悪くなってきたな、ガス漏れでもしてんのかな。
それに、なんだか自分の中から何が抜けていくような感覚もする。
魔法だから別にガスなんて使って無いはずだし、ガス漏れはない。……魔法? あ、これ魔力が足りなくなってきてんのか。
俺の点けた火を消す、だが俺の中の何かが抜けていく感覚が止まらない。この抜け出ていくモノが魔力だとするならまだ魔法を使っていることになる。
火は止めたし、もう魔法は使っていな……そうだった水出しっぱじゃん。
水も止めると何かが抜けていく感覚は止まった。
「火を止めたみたいだけど……そう、魔力切れの兆候が出たのね」
「え、ソラ大丈夫?」
「だ、大丈夫。少し気分が悪いのと初めての感覚に戸惑ってるだけだから」
魔法を止めて大人しくしていると気分は回復してきた、どうやら魔力は時間経過で回復するようだ。
しまった……身体から抜け出ていくのが魔力なら魔力に対する感覚を掴むチャンスだったのに、
さっきの抜け出ていく感覚を思い出しながら自分の中へ意識を向ける。
なるほど、サッパリ分からん。
残存魔力でも分かるかと思ったが上手くいかなかった。
「ソラ君。兆候が出たら、大体残りの魔力が半分くらいになったとされているわ。だから使おうと思えばまだ使えるはずよ」
そっか、まだ使えるのか……いやさっきの感覚からして枯渇に近づくほど症状が悪化しそうなんですけど。……使えと? 鬼ですか? 虎でしたね。
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