第5話 漫画はあってもアニメはなさそう
天恵ってなんぞ?
いや、天の恵みだから天……神的な存在から与えられたモノなんだろうけど。え、神いるの?
でもなんで加護なんて付いたんだ? まるで心当たりが無……有った。
そういえば、『特典映像』になんか神って文字が入った一文が添えられてた気がするな。
『特典映像』を確認すべく表示したプロフィールから【次回予告】を選択する。
「あ、なんか変わった」
「変わったわね」
「変わったな」
虎耳一家の反応を気にしている場合ではない。
『陸の書PV』以外のタイトルは文字が反転し、『特典映像(暇神連合より)』を選ぶが観ることができない。何度触れても無駄だった。
選択を繰り返すのが十回を超えたあたりで、画面に『閲覧制限(開示対象)』の文字が表示された。
俺一人で観ろってことか……。
今観るのは無理だな。
「これでどうやったら異世界ってわかるの?」
「PVって何かしら? 他の色が違う文字は読めないわね、アナタ読める?」
「読めん!」
反転した文字は読めないらしい。同じ日本語なのに……いや、むしろなぜ『陸の書PV』が読めた。
気にしている時間はなさそうだ。
質問攻めされそうなので、『陸の書PV』を選択し映像を見せることにした。
「おー、私が喋ってる。あれ? これ昨日?」
「私もいるわね。昨日の朝ね」
「む、俺は出てこんのか……」
三人がPVを観ているうちに、加護か『特典映像』を確かめたいところだが……。もう一つ出ないか。
里神 空太郎 〈変更可〉
16歳
スキル
・次回予告
天恵
・モジヨムンの加護
出た。
まさか出るとは……。
三人の反応が無いので俺だけに見える状態で表示されたようだ。好都合だな。
【次回予告】を選ぶが変化が無い。【次回予告】は一度に一つしか見れないのだろう。
仕方ないので、【モジヨムンの加護】を選ぶが何も変わらない。【次回予告】が特別なのか。
加護について知りたいと強く意識しながら眺めていると表示が変わる。
・
・
・書いた文字が
文字が読めるようになる加護だった。
あれ、この世界の文字が書けるようになる訳ではないっぽいぞ。伝わるならいいのか……。
勉強の必要は無さそう……でもないな。文字を書くたびに魔力やら何やらを消費するとなると問題がありそうだ。零から勉強するよりはマシか。
「わー! ぶつかる! ぶつかる!」
「ティアナこれ昨日よ、すでにぶつかってるわよ」
「まさか本当にぶつかる直前で口説いているとは」
PVはちょうど俺が轢かれるところのようだ。
俺が観たのはここまでだったな。俺も一緒に続きを観よう。
ティアナは命の恩人でもあったことが分かった。
ぶつかった瞬間に
タイガさんの言っていた「ぶつかったのがうちの子たちでなかったら死んでいた」の意味が理解できた、ティアナの身体能力と騎虎との連携がなかったら地面にぶつかってもっと大怪我か最悪死んでたのは間違いない。
その後は、試験管の人と応援に来てたマチヨさんだったか? が駆け寄ってきて手当てをしている所で、明るい感じの主題歌っぽい曲が流れて、青空にタイトルロゴが描かれて終わりだった。
マチヨさんにお礼を言わないとだったな。後ろ姿しか映んなかったから、尻尾が二本で髪の短い猫耳の女性ってくらいしか分からんぞ。十分か……。
尻尾で思ったんだが、ティアナ達は尻尾が無いのは獣人には色々あるってことなのか。
疑問と言えば、もう一つだけ……。なんで会話が成立してるんだ?
加護は文字を読めるようにするだけで、会話での意思疎通にはノータッチだ。別の神の加護でもあるのだろうか、そうだとプロフィールに表示されないのはおかしい……。もし仮に神が異世界召喚をしたのなら、意思疎通のために文字を読む加護ではなく会話できる加護を付与した方が面倒が無いはず。
つまり、俺は字解神の加護が付く前から異世界人と会話が可能だった可能性が高い。喋れるから文字を読めるようにしたって説明の方が受け入れやすいと思う。
だとしたら……。
「ねぇ、もっかい観たい」
「あらダメよティアナ、邪魔しちゃ。空太郎君、今いい感じで考えがまとまりそうな顔してるもの」
「むぅ、そ、そうだぞ! ティアナ」
「はぁ、アナタも観たいのね」
「な、なんのことやら……」
しまった、この人達ほったらかしにしてたな。
まぁでも、減るもんでもないしリクエストにお応えしとこう。
「聞こえてますよ、一種類しか観せられないみたいなんで同じヤツで良ければ」
「「「ありがとう」」」
あ、うん。三人とも観たかったのね……。
【次回予告】の『陸の書PV』を再度選択し、映像を観せる。
映像コンテンツ的な娯楽が無いのか、それとも自分達が出てるのが面白いのか……両方っぽい。
「あはは、おんなじこと喋ってる」
「そうね」「そうだな」
そういや、俺も『海の書PV』二回観て同じか確かめたな。しかし、同じ映像を連続で観ておもしろいのか? 笑ってるけど。
同じ映像なんだから、全く同じこと喋ってるだけなの……に……喋る?
俺がPVを観たのは目が覚めた直後。ちょっとなんかやらかしてた気もするが、異世界に来て直ぐだ。
だとすると、俺は異世界に召喚された時点で既に異世界の言葉が分かるようになっていたのか。
異世界召喚の際に異世界言語をインストールされたと考えるべきだな。喋れるのは加護によるものではない、恐らく異世界召喚を行使した存在の仕業。
そして、その存在は神ではない。って、別に普通か……異世界召喚物だと魔法使いとが召喚してたりするし。でもPVにはそんな人いなかったよな……。
結局だからどうしたって話だな。言葉が通じる、文字が読めるからなんだってんだ。
あと一歩でなんか掴めそうなんだけど考えがまとまらない。人がいてもほっといて一人で考え込むのに大概考えがまとまらず、何考えてたか分かんなくなるのは悪い癖だな。
「ほら、今よ。教えたようにやってみなさい」
「わ、分かった。やってみる。あー、あー、よし。
ね〜え〜、考え終わったみたいだしぃ〜分かったことぉ〜私にもぉ、教えてくれないかしらぁ〜」
誰だ! ってティアナか……。いきなり変な声で妙に身体をくねらせて話しかけてくるもんだから、驚いてちょっと引いた。誰の真似よ、似合わねぇ。
「えっと、教えるから、その気持ち悪い声はやめてくれないか」
鳥肌立ちそうだから、マジでやめてほしい。
「そうよティアナ、なんで変なアレンジ加えたの」
「だってお父さんがこっそり読んで、がっかりして捨てた本に出てた女の人がこんな感じで聞いてたんだもん」
「お、おいティアナ、その女は相手にされず何も聞き出せなかった奴だぞ。真似する相手が違うんじゃないか? 読むんならしっかり読まんか」
「ア〜ナ〜タ〜」
「うぐ……その、なんだ……主人公が母さんみたいな人かと思うってだな……似てなかったが」
「そうだよ、私もお母さんみたいな人が出てくると思って読んだもん」
「はぁ、一体なんて本なのよ……」
ネコナ母さんは呆れたようにため息をついて本の題名を二人に尋ねていた。この家族仲良いな、羨ましい……。あ、いや、別に羨ましくなんか……あるなぁ……正直。
本は超高級品ってわけじゃなさそうだな。って、ティアナの部屋に本棚あった気がする。
「「スパッとお見通し! 読心探偵ヒトリミ
〜男と女の情報戦 丸鳥のスープを添えて〜」」
「そ、そう……似てなくて良かった気がするわ」
『読心』のフレーズだけで選んだな、この親父。
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