贅沢な日々
妻とスーパー銭湯みたいな,温泉施設に行った帰り、市立の博物館に寄ってみた。
目的は博物館ではない。そこはろくな展示会をやっていない。
目的はそこの公園である。
敷地はさほど広くはないが、まだまだ茶色や赤の葉をつけた木々が残っており,暖かな日差しを照り返して眩しかった。
温泉で温まって、美味しい食事をいただいた後の散歩はとても気持ち良かった。
真っ青な空のもと、公園を歩いたり、ベンチに座って日向ぼっこをしたり、いい気分だった。
ちょっと博物館をのぞこうと思ったら,すぐ脇に喫茶室があり、混んでいなかったので妻と初めて入ってみた。
今時何とコーヒー、紅茶などの飲み物が380円なのだ。これは安い。
実はこの喫茶室は市が運営していて、働いているのは比較的軽度の知的障害を持った方たちだった。
皆とても真面目に一生懸命働いていて、ある方は空席の椅子やテーブルを、丹念に何度も何度も並べてそろえてきっちりとしすぎるくらい丁寧なのだ。
私はコーヒーを飲みながら、その真面目さに感心してしまった。
仕事を辞め、仕事から離れてしまった自分に比べ、現役で活躍されてる彼らを羨ましく思った。一日中こうして働くのは、今の私には疲れてしまって無理かもしれない。
1度仕事を離れると、復帰するのはかなり難しい。自慢するようで恐縮だが、私は上の人にまだやる気があったら戻ってきてくれと言われている。しかし心身ともに、もう限界なのだ。もう仕事はどんな仕事でもやりたくないという気がする。怠け者なのだろう。だから彼らが尚更偉く見える。
ところで喫茶室は窓は大きく、景色がすごく良くて、サイコーの眺めだ。コーヒーの味も悪くない。妻と,いい店を見つけたと喜んだ。何しろ最近はどこの喫茶店もコーヒー1杯600円はするから。
駐車場が公園から少し歩くのだけが難点だが、まあ欲を言えばキリがない。
また来よう、そう話しながら私たちは喫茶室をあとにした。
帰ったら,柴犬キリの散歩が待っている。夕食作りが待っている。皿洗いが待っている。
そういえば、まだ洗濯物を干しっぱなしだ。
なんか、生活って楽じゃないなあ。今まで妻も私も仕事をしながらやってこれたのは、やっぱりまだまだ若かったということだろう。
つまり、妻の病気と怪我で、2人とも随分歳をとったということか。
ま、いいや。いい喫茶室も見つかったし、のんびりいこうのんびり。
贅沢なことだ。
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