盛夏の早朝

やっともうすぐ涼しくなりそうで、長く、異常に暑い夏も終わりそうな気配だ。


この夏は毎日柴犬キリの散歩で、朝は5時に起きて家を出た。日が昇ると陽光が暑くて汗びっしょりになるからだ。まず家を出て右に行く。この家の前の道は、左にいっても右にいっても200メートルほどでお地蔵様が立っていて、なんか守られてる気がしてあたたかい。

で、左に行くと100メートルほどで、野菜の無人販売所があり、今朝は袋に入った大きなナス4本と一袋12粒の大きな栗、とうがん丸々一個妻が買ってきた。全て100円なので、全部で300円である。

こうした無人販売所はこの辺りにいくつもあって、野菜に関しては大分物価高から助けられていてありがたい。

特に今朝は妻が無人販売所の農家の人とばったり会って、売り物にできないけど、皮が一部分だけ固いだけで、食べるのに何の問題もないナスを持っていってください、といくつも渡されたそうで、親切な農家の方に感謝である。


さて、話は柴犬キリを連れて家の前を右に出るところに戻る。右に行くと100メートルほどで、広い歩道のある、右に降りる坂道と交差する。犬の散歩には、最近は歩道がある方が楽になり、私とキリは迷わず右に折れる。

キリがまっすぐ行こうとする時は、キリ、右に行くよ、右だよ、というと、ちゃんと右に行ってくれる。つまるところ、キリは右という言葉が分かるらしいのだ。左に曲がることは少ないけど、どうも左も分かっていて、つまりこの犬は右と左が分かるらしいのだ。


そしてもし右に行かずにまっすぐそのまま歩くと、畑や森に囲まれた、とてもキレイな散歩道に続く。

だけど,こちらに行くと散歩が長くなってしまい、夏場はキツイので、結局この夏1度も行かなかった。


で、右に歩道を下っていくと、道は三方に分かれる。右か、左か、まっすぐか。

キリはまっすぐが好きらしい。というのは、まっすぐ行くと散歩している他のわんちゃんに会ったり、知ってる人に会う確率が高いのだ。

キリが1番喜ぶのは、メイちゃんというチワワの女の子に会った時だ。このワンちゃんとはどういうわけかひどく気が合って、会うととても喜んで暫くじゃれあっている。

反対に、キリが1番嫌いなのは太郎くんというシベリアンハスキーで、シベリアンハスキーは身体が大きいから怖いのか何なのか、とにかく会うと吠えまくる。飼い主さんはとてもいい方なので、こちらは申し訳なくて、いつもどうもすみませんと謝らなければならない。


そうしてスーパーやマンションを過ぎて左手に行くと高校の正門がある。何年も前から廃校になる予定なのに廃校にならずに続いている不思議な高校である。

この正門の前は広くひらけていて私の好きな場所のひとつだ。そこを通るのは朝の5時半から6時頃なので、見渡す限り歩道にもひと気がなく、気持ちが良い。


その高校を過ぎ,広く一周するような感じでスーパーの前に戻って来ると、間もなく散歩も終わりである。

あさ5時台とはいえ、もう私は汗をかいている。


たまに、途中で内藤さんに会うことがある。

内藤さんは近所の農家で定年後ずっと農作業を手伝われていた方で、今はもう70を過ぎていると思われるが、よく、朝散歩をしているのである。

とてもとてもいい方で、私に気さくに声をかけてくださり、世間話をするのだが、何しろ私はめんどくさくていつも適当なところで切り上げてしまう。

とてもいい方なのに申し訳ないと思いながらも、そういう性格なのでどうすることもならない。ま、いっか。

さあ、また坂道の歩道を登って家に帰ろうか、キリ。

家に帰ったら,冷たい麦茶でも飲もうかね。

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