女子高生と紅葉
最近、10人から20人くらいの女子高生に囲まれることが多い。
といっても私はアイドルではないから、何の話かというとバスの中での話である。
自慢じゃないが、わたしの家は駅から遠く、20分ほどバスに揺られないと最寄りのバス停に着かない。そしてさらにそのバス停から5、6分歩かないと家に着かない。
これは自慢なのだが、そのバス停から家までの街路樹が、今紅葉の見ごろを迎えていて、なんとも言えない。
オレンジ、薄紅、黄緑、黄色、そして赤と緑と、ひとつひとつの色が織り込まれたように重なって、ひととき心を癒して元気をくれるのである。
何の話だっけ。
そうそう、女子高生に囲まれるのである。
夜勤明けで家に帰る途中、そのバスを利用するわけだが、途中に高校(女子校?)があり、そこに通学する生徒たちらしい。
もっと若い頃は、こんな風に座席の前も後ろも横も女子高生だったら、なにか感じるものがあったと思うのだが、今はもう何も感じなくなってしまった。
歳のせいだろう。寂しいものである。
しかし歳とともに紅葉などの自然にはますます愛着を抱くようになり、家路を歩きながら、20分かけてここまで帰ってきた甲斐があったと思い、スマホを出して写真を撮ったりする。
多分、以前は仕事が終わってからゆっくりタバコを吸ったりなどして時間を潰して帰って来たから、その分時間がずれて、女子高生の一団と会わなかったのだろう。タバコをやめて、女子高生に囲まれることになったわけだ。
拙作に、「海沿いの列車」という小説があり、列車に妹にそっくりの女子高生が乗ってくるという話なのだが、それを自分でパロディにして、「山沿いのバス」なんてのはどうか、などとバカなことを考えているうち家が見えてくる。
さて、家に入り、手を洗ってウッドデッキのテーブルで、今度は家の裏の木々の紅葉を見ながら、安いワインと妻が作ってくれた朝食で晩酌ならぬ朝酌である。
ウッドデッキからすぐ20メートルくらいのところに銀杏の大木があるのだが、それはまだ緑色をしている。
この木が黄色になると、これがまた最高のワインのサカナになるのである。
子供は来年から社会人。不便なバスで通勤しなければならない。
頑張れい!と励ましつつ、悪かったな、ゴメンな、と思う。
せめて紅葉でも見て、気持ちを慰めてくれい。っと、そんな歳でもないか?
私は複雑な気持ちなのだった。
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