素敵なテーブルクロス



随分見事なテーブルクロスがあったものだ。


妻が、壁にテーブルクロスを飾りたいというので、その手伝いをした。

二十数年前、輸入雑貨店をやっていた時に仕入れ、勿体なくて結局売らなかったテーブルクロスだ。


大きさは2メートル四方位、全面に見事な草花の細かい刺繍が施された、麻のクロス。

見ていると心が豊かになり、満ち足りた感情が湧いてくる。


私はクリムトという画家が好きで、つい昨年都内で展覧会をやっていたのだが、行かなかった。今にして思えば、行けば良かったと思う。


テーブルクロス1枚でこんなに豊かな気持ちになるのだから、自分の好きな絵を好きなだけ眺めていたら、どんなに満ち足りた気持ちになったろう。


そういえば、そのテーブルクロスは、どこかクリムトの絵の繊細な装飾を思わせるものがあった。それがわたしの心の琴線に触れたのだろう。


通俗的に、私は今買うといくらくらいするだろうと思ったが、ちょっと値段がつけられない、あるいはつけたくない、美術品だと思った。


今そのテーブルクロスを見ながらこれを書いている。言葉に言い尽くせぬ逸品だ。


我が家にもこんないいものがあったのだな、と思うとなんだか嬉しい。


お宝鑑定団に出してもいくらの値もつかないだろうが、これは我が家の家宝ににしよう。


ひそかに、嬉しかった。

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