「シェーン」を思い出して



「シェーン」という古いアメリカ映画をご存知の方もいらっしゃると思う。

 YouTubeでたまたま「シェーン」の主題曲を聴き、懐かしくなってペンを取った。

 中学生の頃はマカロニ・ウエスタンが好きだった。クリント・イーストウッドの活躍に代表される、いわゆるイタリア製西部劇である。

 高校生の頃は「大いなる西部」という西部劇に心底感動した。ウィリアム・ワイラー監督(ローマの休日などの監督)の名作である。

 しかし、この「シェーン」の主役のアラン・ラッドは、そのどちらの主役たちとも全くタイプが異なる。

 マカロニ・ウエスタンの主役たちは、いわゆるスーパーマン的なところがあって、結局のところ向かうところ敵なしのヒーローである。

「大いなる西部」の主役たちは、スーパーマン的に強いわけではないが、グレゴリー・ペックやチャールトン・ヘストンといった、背が高くて体格がよく、いわゆる男らしい一流の俳優が演じている。

 しかしこの「シェーン」のアラン・ラッドはどうだろう。ハンサムだが、決して大物俳優ではないし、バッタバッタと敵をなぎ倒すスーパーヒーローでもない。

 にもかかわらず、この作品は随分長く人々に愛され、名作とされてきた。

 ひとつにそれは、シェーンを受け入れたジョーイ少年の家族との細やかな心の交流が描かれている点にあると思う。

 そして肝心なのが、このシェーンは特別ケンカに強いわけでも、バンバン相手をなぎ倒すスーパーマンでもないという点だ。

 いよいよのジャック・パランスとの対決も、勝つか、負けるか、あっ、勝って良かったと思わせるような展開である。

 大人になって、さすがにマカロニ・ウエスタンは見たいと思わなくなったが、シェーンという流れ者の、リアリティ溢れる早撃ちは、何度でも見たいと思ったものだ。

 先程も書いたが、私は「大いなる西部」という作品がとても好きで、西部劇の最高傑作と勝手に思っているが、「シェーン」は、 また違った意味で、いつまでもしみじみと心に残っている。

 世間ではもうとっくに忘れ去られてしまったのがとても残念だ。

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