3本の映画作品
お父さんは、どうして今の映画を観ないで、昔の映画ばかりにこだわるの?
大学生の息子にそう言われて、返す言葉もなく、ただ私が心に秘めている映画鑑賞の体験は、単に私が歳をとって懐古趣味に陥ってるだけでなく、本当に今はない、今は体験することのできない貴重な映像体験だったのだと、心の中で叫んでみる。全くそれは、負け犬の遠吠えに似ているのだが。
私には、自分の映画体験の核をなす作品がいくつかある。それについては、今も、今後も、文章にするつもりがない。なぜなら、特に中核をなす作品を言葉で表現してしまったら、自分の心の中の大切な何かを失ってしまいそうで怖いのだ。
それらを文章にしてしまえば、スッキリして新しい現代の作品群と出会えるかもしれない。しかし、私はあえてそれをしない。
もうひとつの理由に、それをするには莫大なエネルギーと思考力を必要とするからなかなかできないという事情もある。
私の核をなす作品を3本あげろ、どうしても3本だけ、と言われたら、私は次の3本をあげると思う。
まず3番目は、アンドレイ・タルコフスキー監督の「ノスタルジア」。
2番目は、ヴィム・ヴェンダース監督の「ベルリン・天使の詩」。
そして、ナンバーワンは、アラン・レネ監督の「二十四時間の情事」。
どうだろう? 3本ともと言わずとも、読者諸兄姉はどれかご覧になっているだろうか? もしご覧になっていたら、私がこれらの映画に捉われ続けて現代のものを愛せずにいるのを、どう思われるだろう?
あたかも昔の恋人を忘れられずに、一生自分の心を彼女に捧げるかのように、私はこれらの映画を愛しているのだ。
もちろん、他にも沢山あることはある。しかしもし3本だけ、と言われれば、この3本になるだろう。
懐古趣味。私がかつて自分の父親をそう思っていたように、私自身も結局そうなのだろうか?
しかし考えてみるに、人は誰しも忘れられない異性というものがいるのではないだろうか?
また、命をかけた恋愛など一生に何度もないだろう。
その意味で、同様に数本の映画の虜になり、影響を受け続けるということもあるのではないだろうか?
読者さまのご意見をお待ちしたいところです。
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