第3話 再びの教会で
「おお神よ。死んでしまうとは情けない」
ん? デジャブかな?
目を覚ますと神官様が前にも聞いたフレーズを仰っている。
「今回は死んでねーよ! あたしらはな!」
そう言って神官様に掴みかかって殴り飛ばす少女ロヘア。
これで女神って、詐欺にすらならない嘘だと思うのは僕だけなのかな。
「まあまあ、ロヘア様少し落ち着いてください。今はそんな事より現状の整理をですね」
横から止めに入るのは、綺麗な女性。
穏やかな声色が似合う柔和な面立ちだ。
こっちが女神じゃないの?
それが僕の正直な気持ちです。
「チッ。神への無礼がそんな事な訳がないじゃない。でも今はそうね。そんな場合じゃない。それは確かね」
おっとチンピラが言う事を聞いている。
あ、チンピラじゃなくて女神か。
やっぱりロヘアじゃなくてこっちの止めに入った女性が本物の女神様なんじゃ?
「そうですよ。女神様。まずは勇者の蘇生を」
「ええ、そうね。まずはもう一発殴ってから、勇者を蘇生してもらいましょう」
いい笑顔で神父を殴り飛ばすロヘアは、やっぱり女神に見えませんでした。
「おお、神よ。しんでしmぶへぁ」
「言わせねーよ?」
このやり取りも三度目である。
最早最後まで言わせてもらえない神官様がかわいそうで仕方ない。
言うのやめれば良いのに、頭が可哀想なのかなぁ?
まあ、それはともかく、これで3回目である。
早々に死に戻ってきた勇者がと言う事だが、勇者って弱いの?
あ、でも蘇生のたびに僕って意識失ってるから、早々とも言えないのかな?
それを言ったら、なんで毎回『おお神よ』のフレーズで意識を取り戻してるんだろうって言うのも不思議だし、そもそも僕ってなんなんだろう? って疑問が……。
なんか、めんどくさいな。考えるの。
すごく億劫。
「ねぇ、あんた。ミスってんじゃないでしょうね?」
僕が僕の事を考えることをやめた時、ロヘアが神官様に問いかけた。
神官様はロヘアよりも女神らしいあの人に治癒魔法をかけてもらっているようだ。
ロヘアが使った治癒魔法よりも効きが遅いようで、神官様は痛みにまだ少し涙目ですよ。
「な、なんのことでしょうか?」
「あんたも見ていたでしょう? 勇者が記憶が無いって言ってたのを」
「それは、まあ聞いておりましたが……。しかしそれは魔王との死闘の末の影響だと言う話になっていたでは無いですか」
「最初はそう思っていたんだけどね……」
「なら--」
「でも、その次の蘇生でも記憶が無くなってたのよ。蘇生された後の記憶も。これって流石に変じゃ無い? 死闘の後遺症って事なら分からなくもないけど、スライムにやられて死んだだけよ? 全然死闘じゃ無かったわよ! 記憶を失う要素にしてもちょっとおかしいじゃ無い。あんたがミスったって思った方が納得出来るわよ」
「そ、そんなはずはありません。仮に私が失敗をしていたとしても、蘇生魔法の失敗は生き返るか生き返らないかだけです! それ以外に干渉する余地は御座いません。確かに勇者は生き返っていた。ただそれだけが事実でございます」
ロヘアと神官様の会話を静かに見守っていた僕は、思った。
勇者よえーな。おい。
スライムに負けるって……いや僕も記憶ないから、あれだけど知識は残ってるっぽいし、スライムは弱い、最弱だ、ってこの感覚も正しいと思うんだよね。
「神官様のおっしゃる事は事実でございます。ただしかし、勇者様がクソザコに成り下がり、蘇生されるたびに記憶を失ってしまわれていることも事実でございます」
クソザコって……。ロヘアよりも女神然とした彼女の口から出たとは到底思えない、言葉だ。
お腹が黒いのかなぁ?
ちょっと覗いてみたいものだよ。
「ただ、ここで推測だけを行っていても、何も進展はしないでしょう。今は『何故』ではなく、『どうするのか』と言う具体的な今後を話し合うべきです」
そう言って、神官様の治癒が終わった彼女が立ち上がる。
「まあ、それもそうだな。一度宿に戻るぞ、ソフィ」
「はい、女神様。それでは神官様、失礼いたします」
「あ、はい。治癒を頂きましてありがとうございました。聖女様。お気をつけて」
なんと腹黒の女神は聖女様でした。
道理でロヘアよりも女神ぽいと思ったよ。
チンピラよりもよっぽど女神に近いもんね!
腹黒聖女ソフィ、か。
それと、チンピラ女神ロヘアにクソザコ勇者。
濃いな……。
胃もたれしそうなのに、まだメンバーが居そうなんだよね。このパーティー。
最初に見た棺が勇者とソフィさんのを合わせて4つあったはずだし。
って、あれ?
視界が勝手に滑っていく?
神官様から離れていって、外に滑っていく。
ロヘア達について行くよう。
教会の外に出て。
「じゃあな!」
そう言ってロヘアは荒っぽく扉を閉め、そして蹴り飛ばした。
扉を。
「グヘェ」
扉は吹っ飛び神官様を押し潰したようだ。
あたしに挨拶なしとか、あいつなめてんのよ。とか言いながらロヘアはその場を去って行く。
そのロヘアをまぁまぁとなだめながら、後に続くソフィ。
そして何故かそれに引っ張られて滑っていく僕。
何がなんだかわからないけれど、とりあえず。
神官様。ファイト!
哀れな神官様にエール送っておいた。
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