第33話 新しい家に引っ越しました。

そして近くファミレスに入り、食事を済ませた後。俺たちは身内の話に花を咲かせながら帰路についていた。と言っても、ほぼ俺は話していない。姉さんと未玖が俺の話で盛り上がっているだけだった。


「それにしてもエル、お肉を食べれないなんて人生半分損してるわね〜」

「うっせー未玖、そんなこと俺が一番知ってるんだよ」


上から目線で言ってくる未玖に少し腹立ちながらも、俺は返答した。

同時にご飯食べに行く前に言ったことを今すぐ取り消したい。


と、最初はそんな風に歩いていたが、時間が経つに連れてそのこともどうでも良くなってきたため、暇潰しにも姉さん達について行きながらこの通りを観察する。


すると、反対側の歩道の少し離れた先にメイド喫茶を見つけた。

メイド喫茶自体は興味はそんなないが、道でチラシを配っているメイドさんに女の人が一生懸命に口説き落とそうとしているのが様子として見えた。


「って、あれオーナーさんじゃん……」


よく見てみると、隣にはそれを必死に止めようとしている堀江さんがいた。


うん、見なかった事にしておこう。そう心に決めて俺は歩みを続けた。




そして数分して姉さん達は歩みを止めた。どうやら目的の場所へ着いたみたいだ。


「じゃあエル、これからモノレールに乗るわよ」

「ですよねー」


知ってた。だって少し前から駅が見えてたもん。


「でも、行きに乗った車はどうするんだ?」

「それは姉さんがどうにかしてくれたわ」

「うん、どうにかしたよっ!」


いや、どうにかしたよって目をキラキラさせながら言ってもな……まあ、いいか。大丈夫だろ。たぶん……


「じゃあ、私たちの家に帰るわよ!」

「「お〜!」」

「じゃなくて!それ俺の家だろ?」

「それはまあ、エルの家でもあるけど、私たち三人の家よ?」

「それってどういう意味だよ?」

「それ行ってからのお楽しみっていう事で」

「じゃあえーくん、早くモノレールに乗ろう!」


姉さんと未玖は俺の話を最後まで聞かずに、手を引っ張りモノレールに早く乗ろうと促してくる。

これは絶対何か企んでいる顔だ。てか、その匂いがプンプンする!!


「ほら、グダグダしてないで早く行くわよ!どうせ私たち二人には逆らえないんだから!」

「それはお前が無理矢理してくるからであってーーーー」

「ほら、早く進む!」

「はいぃぃい!!」


結局未玖に強く言われると逆らえない俺であった。


トホホ……






で、モノレールと電車を乗り継いで、降りた駅から徒歩で約十分ほど。駅前の通りとは違い、住宅が立ち並んでいた。その通りを俺たちは歩いていく。

それに連れて、俺の心の中の不信感が強くなっていく。

そしてやはりそれは的中した。未玖と姉さんは、それからいくつか角を曲がり、少し歩いた先で止まった。

そこには、立派な一軒家が聳え立っていた。


ま、まさかなぁ。


「エル、今日からこの家が私たち三人の家よ!!」


ですよねぇ……。


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