第15話 エルフ、車で酔う。

車に乗ること約三十分。目的地であるショッピングモールへと到着した。

駐車場の混み具合からするに、朝早い今の時間でも結構な人で中は混雑していそうだ。


「それじゃあ、早速買い物するわよ!」

「うーん、そうしたいのは山々だけど……未玖ちょっとだけ待ってくれる?」


姉さんがそう言って心配そうな目線を送る先にはエル、俺がいた。


「はぁ……みっともないわね。それにしても車酔いするようになってたのは気付かなかったわ。しかも数分で酔っちゃうし」

「うっさいっ!俺だって酔いたくて酔ってるわけじゃ!?うえっ……」

「えーくんそんな叫んじゃ駄目だよ。酔ってるんだから。はい、お水」


俺は姉さんから水を受け取って一気に飲み干す。

といっても小さい口に相応しい量しか飲めてはいないが。


だが、水を飲んですぐに酔いが治るわけがない。そのため、俺たちは近くのベンチで少し休憩をしてから買い物をすることにした。





そしてしばらく休んでからショッピングモールの中に入ったのだが、どうも落ち着かない。


「姉さん、未玖、すごい視線を感じるんだけど……」

「そうかしら?いつも通りだと思うけど……未玖はどう思うかしら?」

「まあ、私可愛いからこんなことは日常茶判事だし?気にしたら負けなのよ。分かったエル?」

「お前が可愛いのは百歩譲って認めるとして、自分で言うかそれを」

「いいのよ別に!可愛いものを可愛いって言うのは普通だわ!」


自慢気にそう言い切る未玖。そんな未玖に姉さんも苦笑いしている。


でもなぁ。気にしたらダメって言われても気になるものは気になるんだよなぁ。


俺はニット帽を深く被り直して姉さんの背後へ身を寄せた。それでも周りの視線は変わらなかった。


「えーっと?私たちの目的のお店はと……あった。反対側かぁ。ちょっと遠いわね」

「そうなの?」

「ええ、そうみたい。エル、間違ってもはぐれるんじゃないわよ?」

「な訳あるか!!」

「そう?結構ありそうじゃない?可愛いから連れ去られちゃったりして?」

「まあ!それは大変。お姉ちゃんが手を繋いであげるから離さないでね、えーくん?」


そう言って俺の右手を手に取った。


「いや、あの、姉さん?」

「仕方ないわね!お姉ちゃんがそう言うなら私も手を繋いであげるわ!」


そう言って空いてる方の手を取った。


「いや、未玖まで便乗する必要ないんだぞ……?」

「うるさいわね。私が繋ぎたいから繋ぐのよ!ーーーいつまでもお姉ちゃんにやられっぱなしなんて嫌なんだから」

「うん?途中からよく聞こえなかったけど……?」

「なんでもないっ!さ、いくわよ!」

「お、おう」


俺は姉二人に手を取られて目的のお店へ向かった。


てか、目的の店ってなんなんだ?


そう疑問に思いながら歩く俺であった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る