第14話 エルフ、双子の姉と出会う。


「げっ、未玖!?」


俺は慌てて物陰に隠れた。その代わり、後から来た姉さんが未玖を対応した。


「あれ未玖、来るの早いね?」

「あっ、お姉ちゃん。まあそれは今日を楽しみにしてたからよっ!」

「へー、そうなんだー」

「で、その楽しみのエルがいないけど、どこ行ったのかしらー?」


未玖は俺の居場所を分かっているはずなのに、探すフリをして挑発してくる。


こいつっ!


だがここは正直に答えるしかなかった。後々もっと未玖が面倒くさくなるからだ。


「ーーー俺がエルだよ……」

「えー?小さくて聞こえないなぁ?」


未玖は耳に手を当てて俺をからかってくる。


絶対聞こえてるくせにっ!そう言葉にしたいのを我慢して、もう一度言った。


「そうだよっ、俺がお前と双子の弟のエルだよっ!!何か悪いかよ!」

「いやー、別にー?前も可愛かったけど、もっと可愛くなったなーって思っただけだよー?」

「遠回しに男の時の俺を馬鹿にするなっ!」


そんな俺に対して未玖は涼しげな顔をしている。あとで絶対仕返ししてやる。そんな野望は胸の奥にしまっておくとして。一つ疑問があった。


「そういえば、お前は俺の女姿見て驚いてなかったけど、どこで俺が女になったって知ったんだ?」

「ふふーん、それはねー」


そう言ってスマホをいじって俺に画面を見せた。画面にはトゥイッターが開かれていた。

そして見たことある写真が表示されていた。


「ば、馬鹿なっ!?何故それを!まさか姉さんが言ったのか!?」

「えーくん、ごめんね?」

「じゃあ、本当に姉さんが!?」

「チッチッチッ、違うよエル。その推理は甘いわよ」

「じゃあどうやって……」


「あのね、えーくん、その画像は私が見つけたんじゃなくて未玖が私に教えてもらったのよ?」

「えっ?それじゃあこのことは最初からーーー」

「そう、筒抜けだったということよ!」

「ガァーンッ」


よく考えてみればそうだ。調べ物や連絡手段としてしかスマホを使うことがない姉さんが俺の女姿をトゥイッターが引っ張って持ってくることがあるだろうか。

それはほぼ無いだろう。

となれば、姉さんとの連絡手段を持っている人物に限られてくる。

そしてそれが未玖だったということだ。


「それじゃあ買い物行くわよっ!」

「そうだね。そろそろ行ったほうがいいかも。さ、えーくんも一緒に行こう?」

「あっ、ああ」


そして俺たちは家の戸締りをしてから下まで降りて車に乗った。


「それじゃあしゅっぱーつ!」


テンションが高い未玖とは違いに、俺のテンションはだだ下がりでお出掛けは始まったのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る