第13話 エルフ、着替えます。

朝、目を覚ますと、そこにはいつもと違う光景が目に入った。


「ふ~んふんふんっ、ふふ〜ん」


姉さんが、ハミングしながら楽しそうに料理を作っている。時計を見るとまだ八時少し過ぎた頃。起こす約束をした時間が九時だったため、かなり早く目を覚ましたようだ。


姉さんは早起きして何を作ってるんだ?


疑問を持ちつつ後ろからこっそりと覗いてみるが、料理通ではない俺にはさっぱりわからない。

だが俺から一つだけ言えることがあるとしら、スカート内に潜んでいる、たまに見える姉さんのパンツが最高です!!

そんな馬鹿みないなことを考えながらしばらく覗いていると、料理をしている姉さんが俺に気づいた。


「あっ、えーくんおはようっ」

「お、おう。姉さんこそおはよう」


苦し紛れの挨拶はうまくいったようだ。


「ところでえーくん、そこで何してるの?」


いってなかったー!!


「あ、あのですね、料理何作ってるのかなーって思いまして……」

「そうなんだー、今お姉ちゃんが作ってるのはね、林檎パイなんだよ?それでね、私が買ってきた林檎がね、とても立派な赤色でね、今日の私の下着もつられて赤にしちゃったよー」

「いや、姉さんピンクだったじゃんーーーーあっ」


そして姉さんはスカートおさえ、頬を染めながら言った。


「えーくんのエッチ」

「ぐはっ!」


今日の姉さんも可愛いです。






その後罰として、姉さんと大型ショッピングモールで買い物のお手伝いをすることになった俺は、朝食用に姉さんが焼いてくれていた林檎パイを食べていた。ちなみに姉さんは朝は和食がいいらしく、俺とは別に色々な物を作って食べていた。


「えーくん、林檎パイ美味しい?」

「あむっ、……っ、ああ、うまいよ?」

「それは良かった。お姉ちゃん嬉しい」

「ところで姉さん、俺買い物行くのにこの格好だとすげー目立つんだけどどうすればいい?特にさ、この髪と耳がなぁー。最悪でも耳は隠せると嬉しんだけど?」


すると姉さんは、「ニット帽を被ればいいんじゃない?」と提案した。


「確かにそれで隠せそうだけど、ここにはそのニット帽がないぞ?」

「そのことだけど、えーくんは心配しないで。後でなんとかするから。それよりもえーくん、その林檎パイ食べ終わったらお着替えしようね?あと下着も」

「げっ」


「えーくん昨日パンツとブラ着けてないでしょう?洗濯機の中に入ってたの知ってるからね?」

「ううっ、なんかそれを穿いたら何かを失いそうで……」

「でもえーくん、これからは毎日着けなきゃいけないんだよ?」

「そんなこと分かってるけどさ……」


俺は最後の林檎パイを口の中に押し込んだ。


「よしっ、えーくんも丁度食べ終わったところだし、着替えよっか」

「えっ?俺の話は無視なのかよっ!?」

「そんなの知りませーん」


姉さんは俺の手を引っ張って、いつの間に置かれていた立て鏡の前まで連れていった。


「はいっ、じゃあえーくん、これ着てみて。ブラは難しいからお姉ちゃんが教えてあげるから。それとも、パンツもお姉ちゃんが穿かせた方がいい?」

「自分で穿きますっ!!」

「よろしい」


俺は姉さんから受け取ったパンツを手に取った。そこからズボンは脱いだが、そこから手が進まない。


頑張れ俺、パンツに足を通すんだ!!


そしてついに、幾度かの葛藤で足首までパンツを履くことができた。


ダメだ、ここから手が動かない!!

でも、いつかは通る道。ここでやらねばいつやるんだ!!男だろ?いけ、俺っ!


そう喝を入れた、そんな時だった。


姉さんの手が俺のわき腹に触れた。


「ひゃっ!?って、姉さん何すんだよっ!!」

「えーと?えーくんに私なりのエールを送ろうと思ってかな?」

「それはエールではなくて邪魔してるっていうんだぞ……」

「えー?でもえーくん、パンツ穿けたからいいじゃん」

「な訳ないだろっ!!って、本当だ、穿けてる……」


自分の下を見ると、しっかり女物のパンツを身につけていた。


「良かったね、えーくん?」

「よくないわっ!はぁ……初めてパンツを穿いたのがわき腹くすぐられた衝動ですって、どんだけだよ……」


まあ、穿けないよりはマシか……そう開き直って次に進むことにした。


「えーくん大丈夫?次はブラなんだけど……?」

「あー、うん、大丈夫だぞー」

「ブラなんだけどね、ストラップを肩にかけて、ブラを下側から持ち、からだを前に倒してバストをカップの中に入れます。

からだを倒したままの姿勢で後ろのホックをとめます。手順は今言った通りだよ?」

「スマホで調べたままじゃねーかよ。はぁ……やるけどさぁ」


俺は姉さんから受け取ったブラを今言われた通りに着けてみる。


「こうやってこうしてーーーーえっと?最後後ろのホックを……って、これって」

「うん?えーくんどうしたの?」

「ホックが全くと言っていいほど届かねぇ」

「ふえっ?えーくんそれは嘘だよー、私より大きくてもカップ一つ負けたくらいだから大丈夫ーーーーっ!?」


姉さんが俺の後ろを確認すると、そこには説明のつく現実というものがあり……


「えーくんのばかっ!」

「えっ、なんで?」


俺は意味もわからないまま、姉さんを泣かせてしまうのだった。




そんなこともあり、色々と時間のかかった着替えだったが、何とか着替え終えることができた。

そして時刻は十時前になっていた。


「よしっ、えーくん、そろそろ迎えに来る頃だから行こうっ」

「えっ、でもニット帽がまだで……」

「大丈夫だよ?下に車来る予定だからそこで渡すよ?」

「えっ?タクシーで行くの?」

「うんん、違うよ?」

「えっ?でも姉さん運転できないし…じゃあ誰が……って、まさか!?」

「そう、まさかのまさかだよ」


その時だった。俺の家の扉を勢いよく開ける音がした。そして、ついに奴はきた。


「えるっ、ひっさしぶりー!!」

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