第12話 エルフ、ハンバーグを食べる
「酷い目にあった……」
俺は疲れと他諸々な理由で、ベッドに寝転がっていた。その一方で姉さんは、俺のお風呂最中に作る予定だった夕食を今作っている。ただ、タネは仕込んでいたみたいで、すぐに準備できるということだった。
「それにしても、あんなに覚えることが沢山あるとはな。しかも、一つ一つ細かいうえに注意することがたくさんあるなんて……女は女で大変だな」
「でも、これでえーくんも女の子に一歩近づいたね?」
「それだったら、今の俺は一体なんなんだ?」
「人間じゃない……?」
「いや、それはそうだけども!少し趣旨が違うんだよなぁ」
「でもそんなことはどうでもいいと思うよ?えーくんがえーくんであることが大事なんだからっ」
「姉さん……」
ちょっと感動。
「はい、感動するのはここまでにしよ?ご飯の準備できたからこっちにおいでよ」
「おう」
姉さんに言われた通りに席についた俺は、さっきまでゴミ置場と化していたテーブルの上に料理を並べていった。
俺もこれ以上は面倒くさいので、話を合わせることにした。
「今日はハンバーグだよ?えーくん私の作ったハンバーグ大好きだったよね?毎日食べたいって。だからお姉ちゃん頑張っちゃった!」
うわぁ‥‥すごい美味しそうじゃん。でも、肉食えないんだよなぁ。
俺が肉を食えないのは実証済みだ。俺が先に姉さんに言えば良かったが、頭の中がお風呂でいっぱいいっぱいで、つい忘れてしまっていた。
そして今「俺ハンバーグ食えないんだ」と口に出すのは姉さんにも申し訳ないし、俺の勘がダメだと言っている。
「うん?えーくんどうしたの?」
「い、いや、なんでもないですよ?」
「なんで敬語なの?えーくんったら変だね?」
「いやー、それほどでもー」
「褒めてないよっ!」
姉さんに的確な突っ込みを受ける俺。ちょっとは紛れただろうか?
「それより姉さん、ハンバーグ以外はないの?」
「……」
姉さんは黙り込んでしまって、ついには俺から目を逸らした。
「ま、マジかよ……ハンバーグ以外作ってないのかよ……」
「だって、えーくんに夢中になってつい……ごめんなさい」
「いや、謝らなくても。いつも自分が食べてるものよりは何倍も良いしな」
俺は姉さんの頭を撫でる。
「えへへっ、えーくんくすぐったいっ」
姉さんも嬉しそうで何よりだ。
でも、これで解決とはいかない。肉が食えないと伝えなければならないのだ。
でも姉さんは、「どうぞ、召し上がれっ」と言っているかのように目をキラキラとさせ、俺が食べるのを今か今かと待っている。
やばい……すごい言いづらいいんですけど!?
こんなカッコいいこと言ったあとに食べれないって言うとか、すげー失礼な気がして心痛むんですけど。
俺は目をキラキラさせている姉さんと、目の前にあるハンバーグを代わる代わる見た。そして覚悟を決めた。
よしっ、食ってやる。食ってやるぞっ!!
俺は一気にハンバーグにかぶりついた。そして……
「ーーーーあれっ?不味くない……?」
俺肉食えないはずなのに。なんでだ?
「えーくん、人が作ったものを不味いって失礼だよ?」
「いや、不味くない。美味いよ。でも、これってハンバーグだよな?肉で出来てるはずだろ?だったら不味くて食べれないはずなんだ」
「肉だと不味い?まあ、えーくんの言ってることはわからないけど、これは正真正銘のハンバーグだよ?でも普通のハンバーグじゃないんだよ?」
「じゃあ、どんなハンバーグなんだ?」
「これはねぇ、豆腐ハンバーグっていうものなんだ。えーくん栄養偏ってるでしょ?だから本当は肉を使いたいけど、出来るだけヘルシーにしたかったんだ。それが功を奏して良かったよ」
そうか、これは肉ではなくて豆腐で出来ているのか。だから美味しく食べられたってわけだ。
そうと分かると、さっきのことも言いやすい。俺はここでカミングアウトすることに決めた。
「姉さん実はーーーー」
カミングアウトしたら姉さんは驚いた様子を見せたが、理解してくれた。ついでに、果物類が大好きになったということも。
姉さんにカミングアウトすることが叶った俺は、気分が晴れて気持ち良く寝むることが出来そうだ。
「じゃあ、姉さんおやすみ」
「ふわぁ……えーくん、おやすみなさい」
「ああ、おやすみーーーーって、なんで俺のベッドで寝てるんだよ!!」
だが姉さんはすでに寝てしまっていた。
「くそっ、ドキドキして眠れねぇ……」
さっきの言葉は撤回。今日はあまり寝れそうにない。
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