第5話 第一世界:異世界の歩き方 初級編

[オネグ]市南門前





「こんにちはー」


Qが門前の入場整列をしている門兵に声を掛ける。


「ん!なんだ!お前達は!何者だ!」


いきなり三人ほどの門兵に囲まれる。


後ろからライブが「服!服ぅ!」と叫びながら走ってきた。

その後ろに宙奈多も着いてくる。


「服?」と言われ目の前の花音の格好を見る。


そして、「ああ、そうだった。」と自分の抜け加減に呆れる。


時代錯誤な街並みをしているが、観光地なので、観光客以外は、この土地の役職の格好をしている。


因みに、この門兵のおっちゃん達は外骨格甲冑をきている。戦争でもするのだろうか?


それに対して、僕達はと言うと、 僕は赤のパーカーに青緑のジーンズ。


ライブラリーは白のブラウスに白地にグレーチェックのVネックワンピース。


宙奈多は白のワイドシャツに黒の燕尾服。

勿論、赤黒の紐リボンと白の手袋は標準装備だ。


花音さんに至っては赤と黒のライブドレスで上品な光沢のあるサテン生地の肘下ミディアムグーロブも装着している。


実に歩き難そうだが、僕達の服は全てライブラリーデータを基盤にマインドフィラメントで構築しているので動きを阻害する事はない。


しかしこれは、どうなのだろう。


浮いている?いや、かなり浮いているのだろう。


門兵どころか門の前に順番待ちをしている人達も僕達をガン見しているし。「写真撮んな!コスプレじゃねーぞ!」と宙奈多が叫んでる。いや、コスプレだよ、それ。


そして、それ以上に問題なのは彼女達の目立ちまくる頭だろう。


元々二人とも東洋系なので黒髪だ。


しかし花音さんのサイドダウンの髪色は今や燃える火の如く赤く揺らめき火の粉を散らす様なエフェクトが為されている。


目の色も髪色に合わせてあり、一見して火の化身の様な出で立ちである。


因みにステージ衣装なので、在り来たりなのだが他にも、水、土、風をイメージした衣装もプログラミングしてある。


宙奈多だって負けていない。漆黒の黒髪を高めのポニーテールにしているがその漆黒は宙奈多が動くと残像を残し、たまに放電している。


僕ら?僕らは至って普通ですよ。


ライブラリーは栗毛のサイドを編み込みにし、ポニーテールをシニヨンにしてスッキリ可愛く纏めている。


うん。大人振りたいオマセっ子の様だ。


僕は……


必要ですか?誰得?いや良いけども。


白金髪の少年仕様ですよ。髪型?普通にネープレスですが何か?


そんな事より、今の格好で門を潜るには非常に怪しい事この上無い集団なのである。


「あーそういえば、対戦闘仕様のままだったね。うっかりうっかり。」


「うっかりじゃねーよ!つーか、これ戦闘服なのかよ!てか、お前らのどう見ても普段着だろ!」


「仕事着も職場の戦闘服です!( ̄▽ ̄)ドヤァ」


「つまりワタクシ達の普段がそれ、すなわちお仕事なのですわ!( ̄▽ ̄)ドヤァ」


「どゆこと?」


「ニートってことだろ。」


宙奈多がジト目で何かいってる。


「てか!アタシは執事の仕事なんてやってないんだが!」


「え?うん。だからライブラリーの趣味。」


「はい!ワタクシの趣味ですわー!」


「💢」


「そんな事より、あの門番さん達、放置してていいの?」


振り替えると怒り顔の門兵が更に人数増々で其処にいた。





さて、結論から語ろう。


百々のつまり僕達は門兵達の前から消えた。


所謂、座標スキップをした。


そして、僕達は今[オネグ]市の北門にいる。


因みに先程迄居たのは南門だ。


きっと今頃、南門は大騒ぎだろうが、逆にこちらは手薄になるだろうから無問題だ。


因みに、何故そーいった行動に出たかと言うと当然、目立ち過ぎだったからもあるが、あのままだと周りの被害が間違いなくヤバいことになる、そんな気配が満々だった。


何がヤバいて宙奈多と花音の戦闘モードがな。相手に敵意を持った瞬間モードが発動してしまうので、さっさとトンズラしないと惑星破壊を引き起こす未来しか見えなかったのだ。


なので、目立たない感じでRe:スタート。


考えて見れば花音も芽以も戦闘モードから通常モード(普段着仕様)にモードを変更すれば良いだけだし、僕もパーカーの帽子を目深に被っていたのでガン見されなければ問題ないだろう。


ライブラリーは………


まあ一人位の犠牲はいいだろう。バレたら迷わず他人の振りだ。

その時は一人で座標スキップしてもらい別の町へ出稼ぎしてもらおう。


とりあえず髪型と服装は替えようと言う事となり、ならば私服にフードマントを着ければが目立たないだろうとの結論のもと、僕達はRe:キャストタイムを挟み服装も髪型も変えてRe:チャレンジ中だ。


因みに、花音さんはベージュのチュニックに白黒チェックのレギンスパンツ+フードマントだ。


髪型も変えて今はダウンスタイルに編み込みを入れている。


宙奈多は紫色のカットソーに水色のフレアロングスカート+フードマント。


スカートはサテンとオーガンジーの二重生地でスカート下の光沢感と透明感が素晴らしい。


しかし宙奈多のスカートイメージが無かったので少し驚いてたりする。


だが、サイドアップスタイルの髪型と相まって良く似合っている。


宙奈多に「その髪型もスカートも良く似合うね。」と誉めたら、顔面を殴られた。


何故?


因みに怒気や殺気が無いと、この体は不意討ちに対応しないらしい。地味に痛かった。


ライブラリーは今着ている服装がお気に入りらしく白のブラウスと白地にグレーチェックのVネックワンピースのまま+フードマント。


一応、髪型だけは変えてビッグテールにしている。


うん。お子様度が上がったな。


全体として、フードマントの組み合わせが、ファッションセンスを台無しにしている。


うん、無いな。


僕?


いや、だから誰得?


一応、赤パーカーは目立つのでライトグレーのパーカーに替えてみた。

パーカーの帽子裏が千鳥柄になっていて隠れたお洒落みたいになっている。

パンツは前のままだ。+フードマント。


髪型?まんまだよ!


さて、そんなことはどうでもいいので今は門の前で行われている検問に集中しよう。


二度目も失敗したら、さすがに凹む。

そんな事を思いながら順番待ちしていると、僕達の番になった。


「身分証明書とこの町に来た目的を言え。」


門番に言われて、



[コエンザイム・Q][10]


[♂]


出身[クウハク]


探究者


特記事項:叡智究明



のカードを提出。


勿論、ライブラリーデータから作成した偽造カードだ。

偽造カードだが、この世界のあらゆるデータから本物として構築、制作され+認識齟齬と認識誘導のフィルターを重ね掛けした代物だ。


「仕事を探しに来ました。」


臆面もなくいい放つQ。


仕事を探しに来たのは真実だし、カード内容だって偽りはないのだ。


名字以外。


「ふむ、よし!通ってよし!……そーだ、ちょっと待て!」


突然呼び止められて内心焦るQ。


「なにか?」


ニッコリ笑って振り替えるQ。


「職業斡旋ギルドは門を出て大通りを真っ直ぐ三叉路の中央だ!行けば分かる。いい仕事見つけろよ!」


割といい人だった門番さんに、「ありがとうございます。」と一礼して進む。


他の三人も問題無く通過出来たようだ。



「おい!何でだよ!なんでこれですんなり通れる!」


門を出て直ぐ様、カード片手に声を潜めて喚く器用な宙奈多。


何故こんなに宙奈多が騒いでいるかと言うと偽造カードの表記がこの世界だと明らかにおかしいからだ。


もう分かると思うが三人にも偽造カードを個々に渡してある。


因みに三人のはこんなのだ。



[ワケシマ・ソナタ][17]


[♀]


出身[グラム]


防人


特記事項:分島流古武術免許皆伝



[カノン・L・パイス][17]


出身[エルガント・パイス]


[♀]


調律師


特記事項:悠久の歌姫



[ライブ・ラリー][10]


出身[クウハク]


[♀]


司書


特記事項:世界理解



「それは、まあ、そういう仕様なので。」


「どういう仕様だよ!にしても、まったく疑われないとか訳わかんねーよ。

アタシはこのカード渡された時からヒヤヒヤしっぱなしだったつーのに。

あんたが門番に呼び止められたときは完全に詰んだと思ったぜ。」


「まあ、堂々としていれば以外と問題無かったりするものですよ。宙奈多は小心者だなー。アハハー。」


「うるせーよ!」と顔を真っ赤にしてQに対して肉体言語を発動し蹴りを連発する宙奈多。


難なく避け続けるQ。


その少し離れた処で花音がライブに話しかける。


「やっぱりライブさんにはバレバレでした?」


ニッコリと満面の笑顔で受け答えるライブ。


「ワタクシは世界理解ライブラリー。

あらゆる情報はワタクシの中に集約し整理されますの。最も理論構築はQの分野ですけどね。」


「じゃあ、Q君も知ってるんだ。この事。」


「まあ、そうですわね。ワタクシとQは概念プログラムを介して情報の共有をしていますので。

因みに制限付きですが貴女方お二人も繋がっておりますわ。

ですからインフォメーションもコミュニケーションもタイムラグ無し、阻害無しで行えますの。」


「えっと、じゃあソナちゃんも知ってるんだ。」


「いいえ、先程制限付きと述べました通り、Sランク以上の個人情報の漏洩には細心の注意をしておりますの。

Sランク以上のプライバシー詳細は本人の許可無く情報を開示する事は世界理解ライブラリーのタブーですの。

お二人は情報ランクSですので、開示されるのでしたら花音ちゃんご自身からお伝えくださいませ。」


「そー……なんだ。……うん。分かった。ありがとうね。ライブさん。」


「はい。なのですわ。」


ニッコリ笑うライブ。



「さて、仕事を探しに職業斡旋ギルドにいきますか。

とりあえずお金稼がないと空腹のまま、この街を徘徊しなければならなくなりますのでちゃっちゃと行きましょう。」


「それもそうだな。」と宙奈多が歩き出す。


「割りのいい仕事残って居れば良いですわねー」とライブ。


「そうだね。」と何か吹っ切れた様子の花音。


四者四様ぞろぞろと歩き出す。



~~~~~~~





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