第4話 第一世界:異世界の歩き方 準備編
とある時間とある場所とある空間
~~~~~
「では、出発前準備をするよ。向こうでは何があるか分からないからね。まずは二人共これインストールして。」
と言って二人に渡される銀色の板。
「え?なにこれ?」と宙奈多は訝しげながら受けとる。
逆に花音にはその板に見覚えがあった。
「これ、EPF(エフェクトプログラムファンデーション)……まさか!」
そう呟くと同時に花音は板を両手で包み込むと「インストール」と呟く。
板は粒子化し花音の全身を巡る。
数秒後、花音はコンサートで披露したステージ衣装を身に纏っていた。
「これ、やっぱり。」
突然、花音が持ち唄をアカペラで歌い出す。
すると、歌に合わせて花音の周りにイコライザー表示の様々な炎や剣や盾の形が現れ始め曲を奏で出す。
それは数を増すごとに様子を変え炎エフェクトを舞散らせなから花音の周りを巡り、風に舞う炎花の様にその場に荘厳さを増し加えてゆく。
一曲歌い終わった花音に対し三人から拍手が送られる。
「いやーこれは益々若葉に自慢話が出来るなー」と宙奈多。
「やっぱり花音ちゃんいいですわねー」とライブ。
そんな中、一人固まる花音。
そして、Qに振り向き
「貴方だったの?サプライズエフェクト。でも、何で。この衣装は…」
真剣な眼差しでQを見る。
「はい。楽しんで頂けたでしょうか。実の所、お詫びの意味もあったのですが、楽しんで頂けたなら組んだ甲斐があったというものです。」
「わたくしも参加させて頂きましたわ!」
「ふふ、やはり花音さんは歌っているときが一番輝いてますからね。」
Qが満面の笑顔で言う。
「ふぇ!あぅ、あっありがとうごじゃぃますぅ。」
後半掠れ気味で礼を述べた花音の顔は真っ赤だった。
「なに口説いているですの!💢」
「アタシの時とは大違いだな!なんだこの格差!💢」
迫る二人に
「いや、違うって!」
慌てて取り繕ろうQ。
その光景を見て一瞬驚いた後、クスクス笑い出す花音。
殺伐とした和やかな時が過ぎる。
「つ、次、ソナちゃんの番ですよ。話進めよ!ね!」と話をぶったぎるQ。
「ソナちゃんゆーな!」
「えー。じゃあ、宙奈多。」
「ぶっ!!」
真顔で呼び捨てるQに吹き出す宙奈多。
「ふざけ!」
「いいから、インストール!」
「ちっ!後で覚えてろよ!インストール!」
直後、光の粒子が宙奈多を巡り数秒後、黒と白の燕尾服を纏う男装の麗人な芽以がいた。
「キャァァァァァー素敵ィー!!!」
突然叫ぶライブ。
「なんでアタシだけこんな格好!差別だよな?これ、絶対差別されてるよな?💢」
「してない!してないから!フリフリスカートとかより格闘系なら動きやすいパンツルックが良いと思っただけだよ!
……因みにその燕尾服に関しては完全にライブの趣味ですので僕は一切感知しておりません。」
「な!たく、まー。フリフリスカートよりはマシか。」
「え?分島さん、私に喧嘩売ってる?売ってるだよね?」
フリフリスカートのステージ衣装の花音がジト目で抗議する。
「いや!違うから!花音はかわいいし似合ってるから!後、アタシの事は宙奈多で良いよ!」
「ふーん。じゃあそうゆう事にしてあげるソナちゃん。」
「ちゃ、ちゃんはいらないから!」
「え、でも若葉さんにはちゃん付けで呼ばれていましたよね?」
とQがすかさず援護射撃。
「な!余計な事言うなぁ!あ、あれは、幼なじみだからと言うか昔から呼ばれてたから諦めというか。」
「なるほど!ふふ、じゃあ諦めて下さい。ソナちゃん!」
「なぁ!」
殺伐としていない和やかな空気が流れるのであった。
◇
「………と大まかな概要は大体こんな感じかな。
細かい説明等は現地に着いてからの方が解りやすいと思うし解らなければ随時、質問して下さい。
と言う訳で、早速出発進行!いざ、異世界グルメツアーへ!」
「いつからグルメツアーになりやがった!」
「ソナちゃん、突っ込んだら負けだと思うよ。」
「その通りなのです。Qは口調が変わっても昔からあんなのですわ。
ですが突っ込みが無ければテンポが悪くなりますし……宙奈多さん。
ガンバ!ですわ!」
「何がだよ!」
「ふふふ。それで何処いくのQ君。」
「あ、はい。まず最初はop34on14の並列時空世界[ヴォカリーズ]ですね。
近場と言う事もありますが、まあ色々とね。
なのでそこにしようかと思ってます。」
「ふーん、そっかー。美味しい物あると良いね。」
「はい、楽しみです。花音さんも好きなだけ歌える世界だといいですね。」
「ふふ、そーだね。」
二人の間に何とも言えない甘ったるい空気が流れる。
「「……………………」」
「何あれ?バカっプル?」
「リア充爆発しろ!ですの!」
何故か意気投合している宙奈多とライブ。
~~~~~
op34on14並列時空世界[ヴォカリーズ]
「着いたー」
「着いたねー」
「一瞬だったけどな!」
「突っ込み役がいると楽チンですわー」
「じゃ、ちゃっちゃと済ましてレッツ!グルメツアー!」
「アタシ達の記憶探しをついでみたいに言うんじゃねー!」
「ふふふ。」
「それじゃ、探索ソナー打ちますわよ。」
「よろしく。」
「スルーすんなよ!」
ライブが右手を高々と上げ指を鳴らすと、〈コーーン〉という音と共にライブの指先から光の帯のようなものが、まるで波紋の様に広がって行く。それと同時に目の前にこの惑星の3Dマップが表記されそのマップの上下左右にはタスク画面が何重に現れては消えこの世界のありとあらゆる情報を片や国家の政治、軍備、財政や裏帳簿などの国家機密、はた又、国家や町、村の流通ルートから品物の原価から商品の値段、味評価に到るまで、情報が上げられ、更には一個人の情報、個人資産から性格、性癖など、どうやって調べた?的なものまで表記され整理されていく。
それと平行して次々と3Dマップには目標がマークされてゆく。
どうやら脳に組み込まれたシステムアシスト表記が目の前に写し出されているらしい。
ライブの前ではどんな情報でも丸裸である。
それを見て宙奈多は「コイツもチートかよ。」と呟く。
「あの、ライブさん。もしかして私の…………。」
「ん?花音ちゃん、なんですの?」
訳知り顔でニッコリ笑うライブ。
「いえ、やっぱり何でもないです。気にしないでください。」
「はは。」と力なく笑うとそのまま花音は押し黙ってしまった。
パンッと自分の両手の平を叩き空気を変えるQ。
「さて、当面の目標ははっきりしているので、まずは軍資金集めから始めましょう。
何せ何をするにもお金が掛かるからね。」
「ん?なんで?場所はっきりしてるんならさっさと集めりゃいいじゃん。」
「飲まず食わずの不眠不休で集めるの?」
「うっ、確かにそうか。」
「そう!飲むにしろ食べるにしろ泊まるにしろ観光するにしろ遊ぶにしろ、ぜーんぶ、お金が掛かります。」
「世知辛いですわね。トホホ~」と嘆くライブ。
「いや!観光とか遊びはどうでもいいだろ!さっさと集めて次行かなきゃ、いつ終わんだよ!」
「それはそれ実証実験も込みなので欠片が纏まってくれた方が回収しやすいですし、余り余裕が無いといらない所で頓挫したり結果出なかったりで精神衛生的に余りよろしくないのですよ。
なので、楽しみながらミッションをこなす位の感覚でいきましょう。」
「うっ、なんか言いくるめられてる感がハンパないけど、一理あるな。まあ、一応従ってやるよ。でどうすんだ?」
「はい。先ずは町に行って発展レベルを目視確認の後、個人又は我々全員にあった日雇いの仕事をゲット。
軍資金は多ければ多いほど後々の旅程が楽になると考えて下さい。
あと、場合によっては危険?が伴う可能性が有ります。
が、まったく問題無いので、まあ一応?気にして行動して下さい。」
「なんだよそれ?随分と曖昧だな。問題あるのか無いのかハッキリしろよ。」
「はいですの。それ関しては[ステータス表記]をご覧下さいですわ。」
「はあ?ステータスだぁ?」
「ステータス?」と花音。
「なんだか宙奈多さんのやさぐれ感が半端ないですわね。」とぼやくライブ。
「[ステータス・オープン]の掛け声でご自分のステータスがご覧頂ける仕様ですわ。そう言ったお約束設定を付けてみましたの。解りやすさ優先なんですわ。」
「ん〰? まーいーや。[ステータス・オープン]」
[ステータス表記]
分島 宙奈多 Lv1 [♀][かつて人類だった者]
称号:男装の麗人[不滅]
情報ランクS
体力[この世界の上限を越えた為、表記不可]
[対象に対し10%増強]
胆力[この世界の上限を越えた為、表記不可]
[対象に対し10%増強]
精神力[この世界の上限を越えた為、表記不可]
[対象に対し10%増強]
集中力[この世界の上限を越えた為、表記不可]
[対象に対し10%増強]
持久力[この世界の上限を越えた為、表記不可]
[対象に対し10%増強]
膂力[この世界の上限を越えた為、表記不可]
[対象に対し10%増強]
耐久力[この世界の上限を越えた為、表記不可]
[対象に対し10%増強]
瞬発力[この世界の上限を越えた為、表記不可]
[対象に対し10%増強]
回避力[この世界の上限を越えた為、表記不可]
[対象に対し10%増強]
魅力[この世界の上限を越えた為、表記不可]
[対象に対し10%増強]
パッシブスキル:
危機管理能力[極]
全言語理解[極]
全言語自動手記[極]
状態絶対耐性[極]
無呼吸活動[極]
損耗自動回復[極]
自己能力制御[極]
全属性耐性[極]
アクティブスキル:
亜空間制御[極]
全属性操作[極]
認識阻害[極]
必中補正[極]
並列思考処理[極]
統計化処理[極]
オリジナルスキル:
武人の極み[近接特化型]
基礎型式:分島流古武術
エクストラスキル:
概念プログラム操作[仮]
加護:
叡智究明[主]・世界理解[副]
「なぁあ!なんじゃこりぁー!」
「え?なに?ジーパン刑事?撃たれたの?」
「なんでだよ!撃たれてねーし!
てか、ジーパンデカってなんだよ!
じゃなくて!
あーもう、いーから花音もステータス開いてみろよ。たく!」
「え?うん。[ステータス・オープン]」
[ステータス表記]
片桐 花音 Lv1 [♀][新人類の極み]
称号:悠久の歌姫 調律師[不滅]
情報ランクS
体力[この世界の上限を越えた為、表記不可]
[対象に対し10%増強]
胆力[この世界の上限を越えた為、表記不可]
[対象に対し10%増強]
精神力[この世界の上限を越えた為、表記不可]
[対象に対し10%増強]
集中力[この世界の上限を越えた為、表記不可]
[対象に対し10%増強]
持久力[この世界の上限を越えた為、表記不可]
[対象に対し10%増強]
膂力[この世界の上限を越えた為、表記不可]
[対象に対し10%増強]
耐久力[この世界の上限を越えた為、表記不可]
[対象に対し10%増強]
瞬発力[この世界の上限を越えた為、表記不可]
[対象に対し10%増強]
回避力[この世界の上限を越えた為、表記不可]
[対象に対し10%増強]
魅力[この世界の上限を越えた為、表記不可]
[対象に対し10%増強]
パッシブスキル:
危機管理能力[極]
全言語理解[極]
全言語自動手記[極]
状態絶対耐性[極]
無呼吸活動[極]
損耗自動回復[極]
自己能力制御[極]
全属性耐性[極]
アクティブスキル:
亜空間制御[極]
全属性操作[極]
認識阻害[極]
必中補正[極]
並列思考処理[極]
統計化処理[極]
オリジナルスキル:
攻防の旋律[広域範囲万能型]
基礎型式:悠久の語り部
エクストラスキル:
概念プログラム操作[仮]
加護:
叡智究明[副]・世界理解[主]
「わー。なんか凄いねー。」
「いや、凄いの一言で片付けていい問題なのか。これ?」
「んー?不滅って何?私達って死なないの?」
「貴女達から[滅]という概念を削除してあるので、確かに死の概念は当てはまらなくなりますね。
まあ、対象から概念攻撃とかがあった場合には、一概に当て嵌まらないと言う訳ではありませんが、しかしその場合もまた概念プログラムの自動更正で強制的に元に戻るので、やはり余り難しく考える事もないと思いますよ。」
「うん?そっかー。よくわからないけど、そうなんだー。」
「アハハ」と笑う花音。
「なあ、この世界の人間でも上限越えてる奴らって結構いたりするのか?」
「? どういう意味でしょうか?上限は上限ですよ。上が無いから上限といいます。」
「うん?でも越えたって。」
「それはワタクシ達がこの世界の者ではないからですわね。」
「え?じゃあ私達ってこの世界だと世界最強なの?」
「まあ、そうなるね〰。」
「そうなるね〰。じゃねーよ!
なんで、いきなり世界最強なんだよ!意味わかんねーよ!
しかも10%増強ってなんだよ!弱い者イジメにも程があるよ!」
「因みに私達の世界だと、どれくらいの数値になるのかな?」
「えーと、………表記不可。」
「え?」
「表記不可。」
「…………」
「…………」
「アタシ達もチートなのかよ!」と叫ぶ宙奈多。
それを聞いて「別に不正なんかしてませんけど💢」と何故かキレるQ。
険悪に成りそうな雰囲気を感じ取ってか「そ、そうですの!実はスキルの詳細も見れますのよ!」と話を強引に変えるライブ。
「お、おう。そうなのか?どれどれ。」と多少の逡巡の後、回避することに決めた宙奈多。
そして詳細。
危機管理能力[極]
そのまんまの意味だよ!不意討ちフェイクもチョちょいのちょいだね。
「は?」
全言語理解[極]
まんまの意味だねー。これがあれば言語学ばなくても読める!話せる!理解出来ちゃう。ラッキー!
「………」
全言語自動手記[極]
まんまの意味だよ?これがあれば文字覚えなくても書けちゃうぞ。ラッキーラッキー!
「…………💢」
状態絶対耐性[極]
やっぱり、健康が一番だね!
「そ・う・で・す・ね。(棒読み)」
無呼吸活動[極]
呼吸しなくても動けるよ!やったね!
「スゲーけど、人としてどーなの?」
損耗自動回復[極]
若いっていいねー。うらやましいぞ!このこの!
「若さ関係あんの?てか一番若いのお前だろ!」
自己能力制御[極]
手加減出来るよ!
「まんまかよ!」
全属性耐性[極]
君のためなら例え火の中、水の中だよ!
「誰の為だよ!」
亜空間制御[極]
本拠地や別次元の移動ツールだね。裏技で[収納空間]作ったり出来るよ!
「ようやくマトモな説明きたよ!」
全属性操作[極]
これがあれば素粒子レベルで様々な物理現象を引き起こせるよ!世界も滅ぼせるね!テヘ。
「テヘ!じゃねーよ!説明の落差有りすぎだよ!」
認識阻害[極]
かくれんぼが得意になるよ!
「しねーよ!」
必中補正[極]
必ず当たるよ!
「見りゃ解るよ!」
並列思考処理[極]
色んな事を平行して考えられるよ!一人で掛け合い漫才出来ちゃうね!
「やらねーよ!」
統計化処理[極]
確立演算で天気予報士も真っ青だね!
「何処の予報士だよ!」
オリジナルスキル
個人の能力から派生した必殺スキルだ!必ず殺すよ!
「物騒過ぎるよ!」
エクストラスキル
これがないとお話にならないよ!
「何の話だよ!」
加護
24時間いつでも見守っているよ!
「ストーカーかよ!」
宙奈多が一人でゼイゼイ言ってる。
「ああ、後、忘れない内に個人で別れた際に連絡したい場合は画面上のcallsignからスクロール画面選択で個人名もしくはallを選択すれば何処にいても必ず連絡取れます。ただ、慣れないと頭で考えていることも駄々漏れるので使用の際はご注意下さい。」
「マジか。」
「何だか、便利なのか、そうじゃないのか微妙だねー。」
「さて、他に何か質問ございますか?」
「突っ込み要素が多過ぎだっつーの!」
「まーねー。ん?ねぇ、この新人類の極みって何?」
「え?そんなスキルもあんのか?ん??アタシには無いぞ?」
「スキル違う。私の名前の横に書いてあるやつ。」
「…………おい、なんだこれ!差別か?やっぱり差別してんだよな!これ!おい、こら!何が、かつて人類だった者だー!アタシだけ人類から隔絶すんじゃねー!」
突然暴れ出す宙奈多に、「悪いのは全自動表記プログラムですのー。」とダッシュで逃げ出すライブ。
[Q]の姿はもう其処にはない。神業バリの逃げ足の速さである。
◇
丘の上から町並みを見下ろす四人組がいる。
「お、町だー」
「町だねー」
「後で覚えてろよ💢」
「突っ込みキャラは、いつも弄られる悲しい性が」
「ねぇよ!」
「ワタクシはいつも弄らてましたわ!」
「Q様サイテー」
「え?Q君そーなの?」
「風評被害だ!?」
「そんな事よりも、見えてきたぞ。あれが[オネグ]市か。なんか古っぽい町並みだな。外壁パネーし、門に衛兵が張り付いてるぞ。」
「そんな事扱いされた!」
「ふふふ。Q君かわいい。」
「愛は盲目って本当だったのですわ。一人で二人の世界構築するなんて!花音ちゃん恐ろしい子!」と、とある少女漫画チックな表情描写を三次元でこなすライブ。
「お前の顔が恐ろしいわ!」と突っ込む宙奈多。
「まあ、いいや、ちょうどいいからこの世界の住人とファーストコンタクトしようか。」
「そうだね。行こう!Q君!」
花音はQの手を取り足早に門の所へ駆け出した。
~~~~~~~
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