第22話【ちょっとした一コマ】

「お、椎名。

お疲れ様」


「ありがとうございます」


俺が試験会場の教室に着いたと同時に椎名が教室から出てきた。


「それじゃ、帰るか。

昼飯はどうする?

どっかに食べに行ってもいいぞ?」


「はい。

何処かに食べに行くのはちょっと。

私、食べるのに時間がかかってしまいますし」


少しずつではあるが食事の量も増えてきている。しかし、食事の速度という面に関してはまだ遅いままだ。


「店に迷惑がかかるからか?

別にお金はちゃんと払うんだし多少遅くたってなんも言われないって。

ほら、高校生とかがさテスト前とかに飲み物だけ頼んで二時間とか勉強してたりするだろ?

そんなのより余っ程マシだろ」


「いえ、お店のこともですが。

零さんを待たせるのは、、、」


俺のことを気にしてたのか。

初めの方は食べ終わるまで一緒に席に座っていたが、最近は食べ終わってある程度したらソファーに移動したり食後のコーヒーを作るためにキッチンに行ったりしてるけど、外食となると食べ終わるまで絶対にその場所で待っていないといけないからな。

そりゃ待たせてる方からすると気を使うか。


「ああ、俺のことか。

そんなんもっと気にする必要なんかないよ。

家族なんだから気を使わせてなんぼだろ?

でもまあ、無理やり外食にする理由もないし家で作るか。

食材あんまりないからこのままスーパーよるぞ?」


「はい。

今日の昼食と夕食は私が作りますね」


「いや、椎名はテストで疲れてるだろ?

俺がするよ」


「いいえ、私がします。

零さんはテストの勉強で忙しいからとご飯の準備などほとんどやっていてくれていたではありませんか。

終わったのですから私もするべきだと思うんです」


今回はやけに粘るな。

どうしたのだろう?


「わかった、わかった。

じゃあ、昼食は俺が作るから夕食は椎名に頼んでいいか?」


妥協案を提示してみる。


「わかりました」


少しムスッとした表情を見せたが俺が妥協したのにこれ以上言っても悪手になるだけだと思ったのか素直に受け入れた。


「晩御飯、何作るとか考えてたりする?」


「いえ、まだ何も」


「いきなりだもんな。

昼飯何にするかなぁ〜。

冷やし中華とかどうよ?」


「冷やし中華ですか。

今日も暑いですしいいと思いますよ」


「よし、それじゃあ、材料は麺とキュウリにハムそれから豚ももとかも入れるか」


「卵や醤油などは家にありますか?」


「うん、まだ残ってたと思う。

椎名もスーパーに着く前に晩御飯、何にするか決めておけよー」


「はい、わかりました」


ふと見えた椎名の横顔はほんの少しだけ微笑んでいるように見えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

突然できた義妹の心の傷を癒そうとした結果(仮) 栗音 @snarou

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ