第21話【テーマパークのチケット】
とまあ、入学式の時にこんなことがあり、それ以降たまに電話で呼び出しをくらって生徒会室で二人でお茶したり、生徒会の仕事を手伝ったりしていた。
「何ボーッとしているの?
こんな美少女を前にしてそれは失礼ではないかしら?」
麗華先輩は自分になかな構って貰えないのが気に食わなかったのかムスッとしながら言う。
心做しか頬が膨らんでいて可愛いと思ってしまう。
「先輩と初めてあった時のことを思い出していただけですよ。
拗ねないでください」
「拗ねてない!
てか、あんたもさっさと座りなさい。
いつまで立ってるつもりよ」
そう言って背中を押される。
「そうですね」
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます」
ソファーに座った俺に麗華先輩が紅茶を出してくれる。
「で、どうなの?
受かりそう?」
俺の正面に座り紅茶をすすりながら聞いてくる。
「どうでしょう。
椎名の学力はかなり高いと思いますが、俺は編入試験受けたことないのでどのぐらいの難易度かもわかりませんし。
ただうかっててくれと願うばかりです」
「だいたいうちの定期テストが八割取れるぐらいの学力があれば合格を貰えるぐらいの難易度だよ」
「それなら大丈夫だと思います」
「すごい自信だねー」
「俺があいつを信じてやらなくて誰が信じるっていうんですか?
なんなら俺の中学の時の卒業アルバムを賭けてもいい」
キリッとカッコつける。
「さすがお兄ちゃん、かっこいいこと言うのね。
それと、もうあなたの中学の時の卒業アルバムは持っているからその賭けは受けないよ」
「マジで?」
「マジで」
「何で持ってんるんですかい?」
「君の同級生から100万円で買ったからだよ」
「このお金持ちめ!」
「ふふふっ。
褒め言葉よ。
ありがとう」
「はぁ、で、誰から買ったんですか?」
「それは教えられないわ。
それも買った時の条件に入ってたんだもの。
それよりも椎名ちゃんの精神面はどうなの?」
流されてしまったがその後の話も重要なものなので大人しく流されることにしよう。
「だいぶマシになりましたよ。
ゆっくりではありますが食事もしっかりと食べるようになりましたし」
「それはいい傾向ね。
身体の調子が悪いと心が癒えにくくなりますからね」
「まだ、たまに悲しそうな顔したりするんです。
それにたまにですが深夜に椎名のすすり泣く声が部屋から漏れてたりするんです。
どうにかしてやりたいんですけど何したらいいかわからなくて」
「そうね。
私は時間が解決してくれるって言葉はあまり好きじゃないんだけど、私達が出来ることがほとんど無い以上待つしかないのかもね」
「やっぱり待つしかないんですかね」
「んー。
あ!
ちょっと待ちなさい!」
少し何かを考え出したと思うと何やら大声を上げて立ち上がり豪華な生徒会長の机を漁り出した。
「どうしたんですか?」
「んー。
ちょっとね。
少し前に誰かからあるものを貰ったような気がするのよ。
それが今のあなた達にピッタリなものだと思ってね」
これでもない、あれでもないと机の中のもの出していく。
いっぱい出てきたな。
あ、これ今話題の漫画の最新刊じゃん。
「あった!」
目的のものを見つけたのかババーン!とチケットのようなものを掲げる。
「何ですかそれ?」
「開けてみなさい」
麗華先輩はこっちに戻ってきて手に持ったチケットを渡す。
「え!
これって」
「そう、人気テーマパークのチケットよ!」
「こ、これってお高いやつですよね?」
「当たり前でしょ?
私は行く予定無かったし椎名ちゃんの心が少しでも安らぐなら安いものよ」
「麗華先輩っていい人ですよね」
「な!
何恥ずかしい事言ってんのよ!」
「照れちゃって可愛い」
「あなたね。
私に優しくしてもらってるからって調子に乗って!」
「ありがとうございます。
麗華先輩」
「最初から素直にそう言っておけばいいのよ」
それからは、麗華先輩の愚痴や二学期から始まる行事のことなどを聞きながら過ごした。
「あら?
もうこんな時間ね。
そろそろ椎名ちゃんの試験終わるわよ」
「もうそんな時間ですか。
麗華先輩と話していると楽しくて時間を忘れてしまいますね」
「ふふふっ。
私もよ。
ほら、さっさと行ってあげなさい」
「はい、わかりました。
今日はありがとうございました」
「はいはい。
また落ち着いたら連絡ちょうだい」
「了解です。
失礼しました」
俺がそう言って生徒会室を出るのを先輩は手を振って見送ってくれた。
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