第20話【生徒会長2】

「で、あなたは私のあのような姿を見てどう思いどうされるつもりですか?」


「どうするつもりと言われましても、別にどうするつもりもありませんよ?」


「嘘ですね。

あなたは私の秘密を知ったんです。

あなたが健全な男子であるなら、あーんなことやこーんなことを要求するに違いありません!」


そう言って両手で胸を抱え険しい表情になる。


「いや、だから何もしませんて」


「嘘です!

も、もしやあなたはそっちの趣味があるとか?

えーと、あのホモ?とか言うやつ」


次は引いたような目を俺に向ける。


「違いますよ!

変なこと言わないでください!

俺はノーマルです!

ノーマル!

普通に女の子の方が好きですから!」


俺は、前にあった机を叩き抗議する。


「別に完璧な生徒会長が裏では漫画見ながら大爆笑してたっていいじゃないですか。

生徒会長だって人間なんです。

息抜きしないとそのうちどこかでガタが来てしまいますしね。

それにケチをつけるやつがいるなら間違っているのはそいつであって会長ではないですよ」


俺が席に座り直しながら言って言葉を会長はジーッと俺を見つめながら聞く。


「もしかして、両親とかに「漫画なんてくだらない。絶対にそんなのに関わってはいけませんよ。ダメな人間になってしまいます」的なことを言われているんですか?」


「いいえ、全面的に肯定してくれる訳では無いですが、好きにしていいと言われています」


「じゃあ、別に問題ないじゃないですか。

問題があるとすれば会長のプライドぐらいですか?」


少しキツめなことを言ってみる。


「ふふふっ。

まあ、そんなものね。

今まで私に向けられてきた期待や憧れはプレッシャーではあったけど、同時にとても嬉しいものだったのよ。それが無くなる、もしくは逆に変な目で見られる可能性があることに怯えているのよ」


会長は、可笑しそうに、そして悲しそうに言う。


「別にそれでいいんじゃないですか?

他人にチヤホヤされて嫌な人間なんてこの世にいないですよ。他人に嫌われるのも同じです。何もおかしな話ではないです。

ですが、秘密を黙ってもらうために自分を差し出すのは駄目ですよ。

それは、あなたを育ててくれた両親や会長のことを慕っている全ての人に対しての裏切りです。

何かあったら相談してください。

他の人はどうかわかりませんが俺は先輩が表では完璧を演じて裏では漫画読んで大爆笑してても変に思ったりしませんよ。むしろ好意的になりました。今日の入学式の壇上で話していた人形みたいな会長とは絶対に友達になりたくないと思いましたけど、漫画読んで大爆笑してる人間味を帯びた会長となら友達になりたいと思います」


「あなた、嬉しい事言ってくれるのね。

いいわ。

友達になりましょう。

ほら、連絡先を交換しましょう」


そう言って会長はスマホを取り出す。

俺もそれに合わせてスマホを取り出し連絡先を交換する。


「君もそろそろ教室に戻った方がいいわよね」


「そうですね」


「今日はここまでにしましょうか。

何かあったらすぐに連絡するわ」


「はい、待ってますね」


そう言って俺はソファーから立ち上がり扉に向かう。


「そう言えば、あなたの名前は?」


「あ、自己紹介してませんでしたね。

五花零です。

好きに呼んでくれで大丈夫ですよ」


「五花零くんね。

知ってるかもしれないけど私は西園寺麗華よ。

麗華って呼んでね」


「難易度高いっすね。

苗字はダメなんですか?」


「ほら、漫画やアニメで出てくるお金持ちヒロインって苗字で呼ばれると家柄のことを気にしてるように感じるから嫌って言うじゃない?あれよあれ。

あなたには私自身を見て欲しいのよ」


「あーよくあるやつですね。

あと、そんな気がある風に言われると勘違いされますよ」


「勘違いしてもいいのよ?

それに応えるかは別としてね」


「ひど!

この悪女!」


「はい、悪女ですが何か?」


「はあ、もういいです。

じゃあ、麗華先輩って呼びますね」


「それでいいわ。

いきなり麗華って呼び捨てにしたら殴ってやろうかと思ってたわ」


「あんたが呼べって言ったのに散々ないいようですね。

もういいです。

教室に戻りますね」


「わかったわ。

じゃあね、五花くん」


「あなたは苗字で呼ぶんですね。

別に我が家は大層な家柄じゃないのでいいですけど。

今日は、あなたのいろんな姿が見られて楽しかったですよ。

れ、い、か、先輩」


「ちょ!

からかわないで!」


そう言って生徒会室を出た。

麗華先輩が何やら叫んでたような気がしたが全く気にすることなく教室に向かった。

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