第16話【編入試験当日】
「よし、準備は出来たか?」
「はい、出来ました」
「それじゃ、行くか」
俺は椎名の返事を聞いてから玄関の扉を開け制服を着た俺と私服の椎名が家を出る。
あれから数日が経ち、今日は椎名の編入試験当日になった。
本当なら編入試験には前の学校で着ていた制服を着ていくのだろうが椎名が前に通っていた海外の学校には制服がなく、この歳なのでスーツはまだ作っていない。最後の砦だった中学の頃の制服もサイズ的に着れなかった。
どうしたものかと思い清水先生に電話したところ
「ん?
制服がない?
まあ、普通は制服だが無いなら仕方ないから全然私服でも大丈夫だぞ〜」
と結構軽い感じで返ってきていろいろ考える前に先に電話をするんだったと本気で後悔した。
それで、なんでお前まで一緒に行くんだ?って思った方もいると思うんだけどこれにもあさーい理由がある。その理由はとってもシンプル。今日まで一度も学校の場所を説明したり案内したりしてないなのだ。
うん、普通に忘れてた。マジすまん。
今から説明してもいいのだが、もし道に迷ったりでもしたら困るのでちょうど暇していた俺がついて行くことになった。
麗華先輩にも生徒会に遊びに来てと言われていたので椎名の試験中はそこで時間を潰させてもらうと思っている。
「はい、到着。
ここが西園寺学園だ。
私立だし結構綺麗なとこだろ?」
俺達は、正門前で立ち止まり凄く大きく立派な校舎を見上げていた。
「はい、すごく綺麗で豪華ですね」
椎名は、初めて都会に出た田舎者がビルを見上げて唖然となっているのと同じような感じになっている。
「まあ、その分めっちゃ金かかってるけどね。
前に麗華先輩に聞いた時は驚きすぎて少しふらついたよ。
おそらくその辺の私立高校の倍ぐらいの金額だと思う」
「麗華先輩?」
「ああ、麗華先輩はこの学校の生徒会長で理事長の孫なんだ」
「そうなんですか。
でも、維持費とか大丈夫なんですかね?」
「この学校は、校舎の綺麗さと制服の可愛さ、カッコ良さ、それと卒業後の進路の補助が充実してて、毎年結構な量の受験生が来るからその受験料と他の学校と比べて数万高い学費でどうにかなってるんだって」
もうちょっと校舎がボロくてもいいから学費を下げて欲しいと思う俺は貧乏性なのかなぁ~。
「そうなんですか。
そんなお金がかかるところに私が通わせてもらってもいいんですかね?」
お金の話を聞いた椎名は少し暗い表情をする。
「いいんだよ。
椎名はそんなこと気にしなくて。
さあ、校舎に入ろう」
俺は、このまま話を続けていても椎名が申し訳ない気持ちになるだけだと思い話を切り上げる。
「あ、はい」
そうして校舎に入っていき、中で先生が待っていたのでそこで椎名と別れた。
別れ際に「椎名なら絶対に大丈夫だから、自分を信じて頑張るんだぞ」って言ったら「は、はい、頑張ります」と少し緊張した様子だった。
大丈夫かな?
学力的には問題ないと思うけどな。
まあ、俺がここでうだうだしてても仕方ないよな。
そうして俺は、麗華先輩がいるであろう生徒会室へと足を進めたのだった。
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