第12話【涙】

「じゃあ、今後のことを話すな」


「はい、お願いします」


あれから約一時間が経ち夕食を食べ終えた俺達は冷たいお茶を飲みつつ今後のことを話すことになったら。


「まず一番重要なのは編入試験の事だな。

取り敢えずこのプリントに全部書いてるから読んどいてね」


そう言って俺は清水先生から貰ったプリントを渡す。


「勉強ようの教科書とかは俺が貸すからそれを使って。

あと、椎名の学力がどんなもんかわからないからなんとも言えないけど、俺こう見えて成績は上位だから言ってくれれば教えれるから遠慮なく頼って」


「よろしくお願いします」


「あとは、家事のこととかだね。

取り敢えず編入試験が終わるまでは家事は俺が引き受けようと思ってるけど」


「いえ、私も家事を手伝います。

澪さんだけに任せるのは申し訳ないです」


「いや、俺は別にいいんだけど。

よし!

じゃあ、椎名には洗濯物を任せよう!

女性の洗濯物を触るのは礼儀としてどうかと悩んでいたところなんだ。

俺のと一緒に洗濯するのが嫌だったら2回に分けてくれてもかまわないから」


「そんなことしませんよ!」


「そう?

まあ、その辺は椎名に全部任せるよ」


おー、椎名の大きな声初めて聞いたな。


「はい、任されました」


その後は、お小遣いのことや食費などの話しをしてから俺の部屋に置いてある教科書とついでにノートを椎名に渡し、とくにやることもなかったので風呂に入り軽くゲームをしてから布団に入った。


◆◇◆◇◆◇


「ん、トイレ」


夜中の3時頃、俺は急な尿意に襲われ目を覚ましトイレに向かう。


「ふぅ〜。

スッキリした〜」


俺は用を足し、寝直すべく自分の部屋に戻ろうと歩き出す。


「くぅっ くっくっ」


「ん?

今なにか聞こえたような?」


俺は耳を澄ませてみる。


「くぅっ お母さん、お父さん」


「!!!」


え?まじ?

お化け!?


「ううっ うっ」


「ん?」


あれ?

この声どこかで聞いたことがあるような?


俺は恐る恐る声の聞こえる方に行ってみる。


「ここって椎名の部屋だよな?」


よく見ると椎名の部屋の扉が少し開いていた。


「くぅっ くぅっ」


「やっぱりこの部屋だ」


俺は申し訳ないと思いながら扉を中が見えるぐらいまで開ける。


「くぅっ お母さん、お父さん。

私を一人にしないで くっ」


やっぱり椎名の泣き声だったんだな。

俺は悪いと思いながらも部屋の中に入る。


「置いてかないで〜」


椎名はそう言って天井に向かって手を伸ばす。そしてその手を俺は無意識のうちに握っていた。


「大丈夫だ。

俺は椎名のお母さんでもお父さんでもないがお兄ちゃんだ。

一人になんかしないし置いても行かないよ」


「んっ」


俺の声が届いたのか椎名は安心したのか表情が柔らかくなり、伸ばしていた手の力を抜く。


「おっと」


俺はその力が抜けた手をゆっくりと下ろし軽く椎名の頭を撫でる。


「ん?」


「あ!」


突然椎名の目が少し開きこちらを見た。


「ん〜ん?

え!?」


やがて椎名は俺のことに気づき慌てて顔を上げた。

俺も手を離して離れようとしたが俺の手を椎名がしっかりと握っているたできなかった。


「いや!あのこれは!

椎名がうなされているみたいだったから!」


「キャー!!!」


「椎名、手!手!」


「え?

手?

あ!?」


そこで椎名は俺の手を握っていることに気づき慌てて手を離す。


「ごめん!

何も変なことはしてないから!

じゃあ、おやすみ!」


俺はそう言って逃げるように椎名の部屋を出て自分の部屋に戻った。


「やっちゃったー!

明日どんな顔して合えばいいんだよ!

ま、今考えても仕方ないか。

もうどーにでもなれ」


俺はそう呟いてから目を閉じた。

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