第14話
「だから俺はここの人達にも、ここの人達の物にも触れないし、変な歩き方をしなきゃ脚は床下に落ちる。扉が壊れて取れている所は何もせずとも通れる。
…………あれ?まだ分からない?じゃあとっておきを出してあげる」
酒井くんは私に背中を向けて、ごそごそと何かをしている。
振り向いて、何かを持つ。
さっきの白い透明な砂が、小さな皿に、円錐型に盛られていた。
全身がそれを嫌悪しているのが分かる。
酒井くんはそれを差し出して、一歩、また一歩と近づいてくる。
「ね、ねぇ、酒井くん?何してるの?」
「ん?扶実ちゃんに分からせてあげようと思って」
「ねえ!やめて!近づかないで!それ置いて!」
酒井くんはまるで聞いていないかのようにじりじりとにじり寄ってくる。
私は震える足で、必死に後ろへ歩を送った。
カシャン、屋上の安全柵に背中が当たる。
私は酒井くんの「それ」から逃げようと必死に、柵を登った。
それでも酒井くんは一歩一歩、私に近づいてくる。
私の体はもう分からない。勝手に後ずさる。
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