第11話



そして今、私達は屋上に立っている。


空は私たちを拒むように厚い雲で覆われ、風が強く私達に吹き荒んでいる。


私達がここへ揃ってもう5分は過ぎていた。


酒井くんは向かいの柵に寄りかかってどこかを眺めている。



「話って?」


先に口を開いたのは酒井くんだった。


心臓が一段と深く音を立てる。


酒井くんはおもむろにこちらへ振り返って、今度は背中を柵に預けた。


私は大きく息を吸い込んで、口を開く。


「私ずっと酒井くんのこと怪しんでたの。この人何か隠してるんじゃないか、って」


「うん」


「それでね、酒井くんのこと観察し始めたの」


「うん」


私はそこから、観察で得られたことを全て話した。


ぶつかった時の違和感。物に触らないこと。ドアを重そうに開けること。変な歩き方の規則性。


相槌は全て「うん」だけだった。


「それでね、昨日、見ちゃったの、私。酒井くんが1階の空き教室に入るとこ」


「…」


相手を真っ直ぐ見据える。


彼の口は何も言わない。


心臓がどくどくと脈打つ。苦しい。


ひとつ深呼吸をした。


口を開く。




「あなた、幽霊なんでしょう?」




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