第9話
それはある放課後のことだった。
その日は私が日直で、私は運悪く先生の雑用を頼まれていた。
私の教室は2階で、そこからは向かいの棟の1階を見下げることが出来る。
課題の提出チェックをしていた私は、何の気なしに向かいの1階を見ると、一人で歩く酒井くんを認めることができた。
仕事にも飽きて疲れた私は、既に習慣化してしまっていた観察をするため、ぼーっと眺めていた。
すると何故か酒井くんは物置化されている空き教室の前で立ち止まり、少し周りをきょろきょろと警戒すると、扉に手を掛けることなくすぅ、っと中へ入り込んでいった。
そう、本当にすぅ、っと。
酒井くんは、扉をすり抜けて中へ入っていた。
持っていたペンがカラカラと転がり、カラン、床に落ちる音がした。
言葉の代わりに喉がひゅ、と鳴って、息をするのを忘れる。
どういうこと、だろう。
人間って、実体を無効化出来る技術を持っていたんだっけ。
それともあれか。酒井くん魔法使いだったのか。
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