第3話 勇者がやらかした

取り巻きがボックスで盛り上がった後も勇者は王と何か話していた。

そして運命の時はきた。


「クラスのみんな!俺は勇者だ!とても強い!そしてみんなもそれなりに強いはずだ!魔王って調子乗ってるヤツボコってさっさと日本に帰ろうぜ!!!」


「「「「おおおおおおおおおおおお!!!!」」」」


やってくれたよこの勇者。


男子は歓声を。

女子はほとんどが何が起こっているかわからないのか、キョトンとしたままの状態が続いていた。



「これからの方針は、レベリングに経験を積んで魔王を殺す!これでみんないいか!!」


「「「「おおおおおおおおお!!!」」」」


男子たちの脳には異世界無双しかないのかもしれない。

レベリングは大変だし、経験を積むのにどれほどの時間がかかると思ってんだ。

それに日本でぬくぬくしてスマホいじりながら育った俺たちが異世界のラスボス相手に喧嘩吹っかけて本当に何考えてるんだよあのバカ勇者。


「勇者様。恐縮なのですが、ステータスを見てはいかがでしょうか」


「うむ、みんな一列に並べ!!」


「「「「おおおおおおおおお!!!!」」」」


王が人の頭ぐらいある透明な水晶玉のようなものを持っていた。

そして勇者は興奮した様子で楽しそうにしている。


勇者に一列に並べと言われたので反抗するとめんどいので素直に並んでおく。

もちろん最後尾。


前に少しずつ進んでいく。

やはりクラス長の昨夜ゆうべ 雄太ゆうたは勇者だったようだ。

ってかクラス長の名前初めて知ったし。

まあなあんなに調子乗って「勇者ではありませんでした!」だったらそれはもう爆笑もんだ。


その次はうちのクラスの先生。盛岡先生だ。

先生は賢者でした。

数学もできて理科もできて国語もできて体育もできる万能先生なだけあって万能な賢者のようだ。


その後も喧嘩を良くする問題児の新井あらいなどは拳闘士だし、剣道部はみんな剣を扱う職業だった。


これはあくまで推測だが、日本で生活していた頃の行いに沿って職業が決まっていっている。

俺の場合、平凡でぼっちだから……なんだ?


そんな疑問とともに前に進んでいく。

女子の方に錬金術師とかも出ている。

そして進むうちについに出てきた。

その職業は。




『村人』




あいつは平凡なアニオタだったはずだ。

なら平凡ってことは村人になる可能性はあった。






これって、俺も村人ですか?







それを考えた瞬間背筋が震えた。

村人ってことは強くない。

強くないってことはこの世界では死以外ない。


アニオタの男子は絶望と今後起きるであろう死という現実を完全に感情が消えた顔でケタケタ笑いながら涙を流している。

そうだろう。

だって彼は死を約束されたのだから。


ついに俺の番が来てしまった。


「お名前は」


兎牙とが すずめだ」


「触ってくださいませ」


「はい」


少し震える手で人の頭ぐらいある透明な水晶玉に手を乗せた。

心臓の音がうるさいほど鳴り響いている。


手が触れた瞬間に水晶から光が漏れて何もない頭上に職業が映った。




『ぼっち』





なんだこれ。

たしかに村人よりはマシかも……いや、マシか?

村人よりも弱いかもしれないし、強いかもしれない。

よくわからん。

たしかに学校生活はぼっちだった。

絶望は後だ、使えるかもしれない。


ってかこんな職業あんのかよ。

周りからクスクスと聞こえる。

やめてくれ。

なんの羞恥プレイだよ。


雀は恥ずかしさのあまりに下を向いた。

めっちゃ恥ずかしい。

隠れたい。

そんな思いをし、さっさと端っこの方に避難した。


「皆さまの職業は全て記録いたしました。今日は疲れたことでしょう、お一人様一部屋ずつ案内いたしますのでごゆっくりお休みください。

それと明日から訓練をしてもらいますお忘れなさらないようお願いします」


王はそんなことを言ってきた。

1人一部屋はぼっちの俺にはとても有難い。


勇者から1人ずつメイドに案内されていく。

俺も部屋に案内された。

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